アニメ「京都寺町三条のホームズ」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「京都寺町三条のホームズ」を一気観しました。

 

以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 

原作はミステリー小説の様です。
原作小説は読んだ事ありませんが、アニメを観る限り
どうにも質の悪いミステリーな気がします。

 

ミステリー小説の肝となるのはトリックであったり動機であったりの
その謎解きの論理的思考の組み立てにあると思っています。

しかし、この作品にはその論理的思考というものが無い、
読者・視聴者を納得させるだけのものがない、感じられないのです。

 

探偵役の「家頭清貴」(ホームズ)が披露する推理というものが
想像、妄想の域を出ず到底推理と呼べない納得の出来ない作りになっていますし
家頭ホームズの語る言葉に悉く納得できないのです。

 

もう第1話からしてツッコミどころ満載でした。
主人公は、半年ほど前に京都に引っ越してきた女子高生の「真城 葵」となりますが
【とある理由】で骨董店を訪れる事になり其処でホームズこと家頭 清貴と出逢い
物語が始まっていきます。

 

骨董店を訪れたその【とある理由】というのが
「京都に引っ越してくる前から付き合っている彼氏がいたが
その彼氏が別れ話を切り出し、しかも選りに選って葵の友達と付き合うことになった、
という話を聞きその友達と彼氏に直接文句を言いに行くための
新幹線代を工面するために骨董店を訪れた」というものでした。

 

そして骨董店に祖父の遺品である掛け軸を売りに来ていたのですが、
この遺品は別に葵が遺言で譲り受けたという訳でなく、葵の所有物ではないのですが
それを家族に内緒で勝手に持ち出し売ろうとする、
この犯罪思考のヒロインがまず信じられない!

以前に何処に住んでいたのか知りませんが
京都からの新幹線代なんて3、4万円もあればお釣りがくるでしょう。
普通の思考なら、今の時代中古店やネットへの出品なり場所には困らないので
まず私物を売る事を考えないでしょうか。高校生であれば小遣いもそれなりに
貰っていると思うし足りない分は小遣いの前借りという事もできるのは?
とまずは自分の出来る範囲で金策しないのでしょうか。

 

それを一足飛びに遺品を勝手に持ち出し売っ払って金を工面しようとする
その思考が理解できません。それでも葵のキャラクターが考えなしに行動するギャル系
JK設定で、正しい事を白、間違ったことを黒としたとき、黒寄りのグレーの位置に居た
ヒロインが家頭ホームズとの出逢いを通じて成長して白のヒロインになる物語
として描かれているのならまだ納得したかもしれません。
しかし見た目や言動、性格設定からは清純な女子として描かれている様で
この犯罪思考のヒロインのキャラに全く納得できません。

 

最初、骨董店を訪れた理由を言い淀んだ時、
家のトラブルで喫緊に大金が必要になったのかと想像して
もしそういった家族のためという理由であればまだ納得できたかもしれません。
しかし、その理由が家族は関係ない全くのプライベート事であり
その私事の為に勝手に祖父の遺品を売ろうとする奴を清純なヒロイン
として描いてはダメでしょう。

 

そしてさらに第1話での駄目のダメ押しとなるのが
家頭ホームズが葵に対して言った「良い眼を持っている」発言になります。
いやいやいや、見る眼があるとか…これ聞いた時は思わず口に出してツッコみました。
その「良い眼」で選んで付き合った男が、友達が裏切り行為を行ってる訳なんだが…
(後々判るのですが元カレも友達もどっちも見事にクズな性格でした)
男を見る眼、友達を見る眼、人を見る眼がないのは確かだろうに
家頭ホームズもその話を聞いた上で何をトンチンカンな事を言ってるんだと思いました。

 

(鑑定眼としてだけの意味で「良い眼」とは普通に考えたらここでは使わないでしょう。
この話が・小説が本当に「推理・ミステリーもの」であるならば、ここで使われている
「良い眼」とは「真実を見極める眼」であり、それは人や物事に対してつぶさに観察し
本質を見逃さない眼であると思うのですが、その眼で選んだ男や友達があんなんでは
全然説得力がありませんよ)

 

葵がその「良い眼」で次に選ぶのが家頭ホームズになるのだと思いますが
一度そんなダメ男を選んだ奴に選ばれても…それはダメ男という事じゃないの?
そういうところ気にならないのかな?俺は気になるが…自分がもし担当編集者だったら
葵のキャラ設定にしてもこの「良い眼~」台詞にしても指摘して直させるけどなぁ…

 

 

そして続いて第2話でもツッコミどころがあります。
葵祭の主役、斎王代というミスコンのトップみたいなのに選ばれた娘とその家族からの
家頭ホームズへの依頼で話が始まります。斎王代をやめろと怪文書が届いて
それを解決して欲しいとの相談です。で、犯人は斎王代に選ばれた娘の妹だったのですが
斎王代は色々とお金が掛かるらしく家の経済事情が良くないのを知って
辞退させようとした、という話でした。

 

(この話にしても納得できないのですが…。家の為を思ってという動機ではありますが
もし警察にまで話が行き、結果、狂言だとばれたら客商売をやっている家の経済状況を
さらに苦しくさせる事になるとは考えないのか甚だ疑問です。普通の思考であるならば
まずバレた時の事を考えるはずです。もしバレたら・捕まったら、と考えるから皆
「やっちゃいけない」と思い止まるわけですが、この妹は実際に行動を起こしちゃう、
その普通の思考がないところが納得の出来ない作りになっているのです。
犯罪行為に走ってしまう止むに止まれぬ事情を、読者を納得させるだけの動機付け
が出来ていないのが問題なのです。こういうところを指摘するのが編集の仕事だと
思うのですが何故それがなくこのまま世に出ることになったのか理解できません)

 

その犯人である妹は葵と同じ高校の同級生であり、この事件を通じて二人が仲良くなる
みたいな話の第2話となっており、この話の最後、家頭ホームズの台詞で
「自然に友達になりたいと思える方に出会えて良かったですね」みたいな事を
言ったのですが、いやいやいや事件通して出逢ってこんな不自然な出逢いはないだろうし
斎王代辞退させるために狂言脅迫を考えるような奴と友達になりたいと思うのか?
(でもまあ「勝手に遺品を売り払おうとする奴」と「狂言脅迫を考える奴」とで
発想が犯罪思考者同士という意味で、類は友を呼ぶ的な意味で
自然に友達になりたいと思ったのかもね、とは納得できますが)
本当に的外れな台詞を吐く探偵役だなあと感じます。

 

また、第3話では家頭ホームズも昔葵と同じく恋人に裏切られたと語るのですが、
お前も見る眼がないんかい!それで鑑定とか名探偵とか言われてもなあ、
恋になると眼が曇るとか言ってますがそんな奴が時には人を裁定する様な探偵事を
やっちゃいかんだろと、しかも「運命~」がどうとかも言いだすし、
推理物の論理的思考を吹き飛ばす様な事を平気でよう言わせるなと呆れてしまいます。

 

さらに第10話では、家頭ホームズが昔付き合っていた恋人について、
別に好きでも何でもなかったが付き合ったとか言い出す始末何だこのクズは、と
本当にキャラクターからお話まで、色々と作りがボロボロな作品でした。

 

そしてさらに言うなら作画もひどい手抜きで、喋っているキャラの口の動きが
開いている口、閉じている口の2パターンでそれを単純に交互に繰り返し
パクパクしているだけで台詞に合わせようという気が皆無なのです。
最初の1,2話辺りからこんな感じで聞こえてくる声と口の動きの違和感が凄まじく
何から何まで本っ当に色々と残念なアニメでした。


(2018年10月31日02:01mixi日記投稿分)