アニメ「甲鉄城のカバネリ」(2016) ~感想

録り貯めしていたアニメ「甲鉄城のカバネリ」(2016)を一気観しました。

以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 

作画は素晴らしいのですが、お話がダメでマイナス評価の作品となります。

大河内一楼やっぱり嫌いだなと思った作品でした。


唯一面白いと思ったのが、「カバネ」という脅威に怯え恐怖し人々が『お前カバネじゃないか』と他者を排斥する様が「コロナ」という脅威に恐怖しコロナ罹患者を叩く今の世の中と符合する点ですね。
当然、今の異常状況下だからこそ感じた事であり、物語自体の良し悪しとは何の関係もないので評価の対象にはなりませんが。

 

まずダメなのが、序盤で「カバネ」の恐ろしさ、人心の乱れ、人類の危機というものを描いておきながら、終盤は「一人の人間への復讐」という小さな小さな話がメインになって行く点です(しかも復讐自体はあっけなく完遂します)。


その復讐の動機も、自分を陥れたことに対する(自分のための)復讐という、その復讐の規模に対して、憎悪・怒りの養分としてもちょっと足りない・弱いと感じるのです。
これがもし、母親や妹なども犠牲になったというのならば、かたき討ちの意味もあり、二人分三人分の愛する者達の想いも込めた復讐として少しは重みも増すのですが…。

 

人類の存亡の危機である「カバネ」に対する有効な対応方法が確立した後に復讐を決行するというならまだ分かります。「カバネ」後の人類統治を見据えて、そのついでに個人的な復讐も行うというのならまだ分かるのですが。。。
しかし、「カバネ」の脅威に対抗する術もないままに個人的な復讐ってアホか?という物語展開なのです。序盤で描いていた「カバネ」の恐怖は何だったの?まずそれを何とかしてからでしょと納得できないのです。

 

そして、なによりこの脚本家の話がクソなのが、年端もゆかない子供を殺す話がある事です。それも2エピソードありました(一人は胎児が母親ごと殺され、もう一人は理不尽に斬り殺されます)。


もし、年端もゆかない子供達が主人公の話であれば物語の中でその中の一人が死ぬという展開はあるかも知れません。
しかしこの作品はそうではありません。犠牲になるのはメインキャラではなく、サブキャラとも言えないゲストキャラで・そのキャラの死のエピソードがストーリ展開上必須という訳でもないのにそういう胸糞悪い話を平気で書くその腐れ根性が嫌いなのです。
この大河内は子供が死ぬ話を観て視聴者が喜ぶとでも考えているのでしょうか?
そのエピソードが物語の重要な起点となりその後のストーリに大きく影響し最後には救われカタルシスがあるという事も全くないのです!
ただの1エピソード中の悲しみ・怒りのための要員・要素として配置され殺しているのです。本当に反吐が出るような脚本です。


他の作品、他の脚本家の話でも年端もゆかない子供が犠牲になりそう!?みたいな展開はありますが、ギリギリのところで助かったり、実は生きていたという展開で収まります。
(最近観たアニメでいうと「BEM」の中の1エピソードで、子供がキメラの実験体にされた?みたいな話がありましたが、結局は子供は無事である事が判りました)


おそらくここはエンタメ作家としての矜持でしょうね。ここまではやって良い、これ以上はやってはいけないエンタメとして物語が楽しめなくなるという見極めですね。
大河内一楼はその辺りの見極めができない、だからこそエンタメ作家として認めない、嫌いなのです。

作画が素晴らしかっただけに、本物の脚本家を使っていれば…と、もったいない作品でした。


(2020年07月19日23:15mixi日記投稿分)