漫画「DEATH NOTE 短編集」について

以下、「DEATH NOTE 短編集」について、多少のネタバレを含む感想となります。


まず始める前に述べておくと、DEATH NOTE 好きですよ。
コミックスこそ買ってはいませんが、ジャンプで連載していた当時は毎週読んでいました。
(今回の短編集は買いました)


読んで思ったのは大場つぐみさんはやはりシッカリ「納得」を作る人だな、
読者からツッコミが入るような穴をシッカリ埋めてお話の構成が出来る人だなと感じました。

 

また、その埋めた穴について全部を解説しない~あとは読者が読んで想像して補ってね~というスタンスが良いですね。


たとえば、物語序盤aキラがリュークに2年後の再訪を約束させる意味について…、作中では語られていませんが、おそらくは自分の口座を持てる年齢まで待つ意味があったのだと思われます。
多くの銀行は口座開設に年齢制限はないようですが、作中のヨツバ銀行には年齢制限があったのでしょうね。(他に財産を親に管理されない民法上の意思能力の関係もあるかも)
おそらくaキラは元々(リュークに出会う前から)高校生になったらヨツバ銀行に自分の口座を開設するという親との約束・予定があったのでしょう。
だからこそ、ノートの所有権を捨てて記憶を失くした後でも口座開設に影響・問題がなく開設できたのだと考えます。
そして口座を開設したその年に大金を得る事になれば怪しまれるとも考え1年間という時間を空けたのだと思われます。

 

この辺りは作中で特には語られていないのですが、こういった感じで全部を語らないで読者に想像させるスタンスは好きですね。

 

そして、物語終盤・オチの展開についても読者からのツッコミの穴を埋めるために事前に色々と布石が打ってあります。


まずaキラはリュークに必ず約束を守る事を誓わせ、この約束のためにノートのルール変更を伝える事ができなくなっています。
リュークも途中でのルール変更はフェアじゃないので何とか知らせようとしたのでしょうが「約束」を強く念押しされていたためにあの結末になったのでしょうね。

(リュークが頭の回る死神であれば、リュークの持ってるノートを他の死神(ジャスティンあたり)に渡し(預け)aキラに触らせて一時的に記憶を戻しルールだけ伝えてもらう事も出来たと思うのですが、シドウ程ではないとはいえ抜けてるところのあるリュークのキャラクターでは思い至らなかったのも「納得」があります)


aキラがリュークに「二度と自分の前に現れない様に」約束させた事も、
「L vs キラ(ライト)」の戦いのときの一般宅に60個以上の監視カメラ設置の話を聞いていて、
さらにリュークが見える人間(松田達やニア)が居る事を聞いているのが布石になっていて、
もしヨツバ口座を持つ100万人宅にカメラを設置されリュークを見られたら言い逃れが出来ないと考えた結果、ノートの所有権/記憶を捨て、「二度と自分の前に現れるな」と誓わせた事に「納得」いく構成となっています。

大場つぐみさんの、こういった穴を埋めて話を構成するのはホント巧いですよね。


aキラ編はどういう展開になるのか楽しみながら読んでて面白かったのですが、1点、気になるというか不満な事があります。
それは、ニアが本編時より頭が悪くなっているという点。

 

おそらく最初の構想で「ニアを敗けさせる」というのがあって作られた話だと思うのですが、だからこそニアがaキラより頭悪く・デスノート本編時よりアホに作られているとのだと感じました。

 

aキラの考えが読み切れず結果「敗けた」ニアですが、
「大金をばらまき、星(犯人)がどこにいるか分からなくする」というこの方法って、
SPKの基地が出目川達に襲われたときに使った、「大金をばらまき大勢を群がらせそこに紛れて脱出する」というニアがデスノ本編でやってる事と発想は同じなんですよね。

 

それなのに(ニア自身が同じ事をやってるのに)、aキラの思考を読み切れないという事に「納得」がないのです。
これはやはりニアを敗けさせたいがために本編時よりアホにさせられてるんでしょうね。ココがちょっと残念ポイントでした。

 

(あとついでに、デスノ本編について言うなら、ニア編…あの決着はあまり納得はしてないんですよね…ジェバンニや魅上の行動に「納得」がないのもそうですが、
メロの犠牲があったとはいえ「ニアとメロの二人でLを超える」というはキャラクター的にも能力的にもちょっと「納得」がないんですね…
ここでLを超えるためには「命を懸けた結果」Lを超えた、という「納得」が欲しかったですね…そう、デスノ実写版でLが使った手~「デスノートに書かれた事は覆らない」を逆手に取った方法~
で、勝つというのなら「納得」があったのですが…大場つぐみさんに実写映画の金子監督の様な相棒が居れば漫画本編も「納得」の結末が作れていたのではと思います)

 

上記、残念な点が1点だけありましたが、aキラ編面白かったですよ。

 

 

以下雑記、

あともう1点納得がいかないというか釈然としない事が…

(内容自体についての話ではないのですが)

デスノ本編も今回の短編集についてもいえる事ですが、全編通して結局リュークの独り勝ちなんですよね…

 

死神界に退屈して「オモシロ」を求めて人間界にノートを落とし、ライトに拾われた結果、望み通り「オモシロ」を充分楽しんだらライトとさよならし、そして今回も面白く使ってくれそうなやつにノート拾わせそこそこ楽しんだらaキラとさよならし…と人間界を混乱させるだけ混乱させ、特に何の罰を受ける訳でもなくリュークは自身の望み通り「オモシロ」を楽しむだけ楽しむという独り勝ち状態(レムはリュークのオモシロに巻き込まれて消えたというのにね)…そろそろリュークも痛い目に遭った方が良い・バランスが取れるのではと気になっています。

 


以上