アニメ「バック・アロウ」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「バック・アロウ」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。


谷口悟朗×中島かずきという事で期待していた本作ですが、作品の評価としては可もなく不可もなくとなります。
基本的な構造、構成は中島かずきさんの別作品「天元突破グレンラガン」と同じでしたね。

 

「壁」に閉じ込められた世界からの脱却を図る物語は、「グレンラガン」の「地下」に押し込められ管理される世界からの脱却を求める物語と同じですね。
(中島かずきさんはこういう閉じられた世界・管理された世界からの脱却、反逆の物語好きよね…グレンラガンにしてもBNAにしてもバック・アロウにしても…ね。第1話冒頭の「壁」の設定を聞いた時、あ~中島かずきの世界だわぁと感じました)
また「壁」の内側(「グレンラガン」では「地下、地上」)での戦いが終わるとその外にあるより大きな「システム・調整者」との戦い((グレンラガンの「アンチスパイラル」)という構図・構成が同じですね。


キャラクターもレッカ皇帝のゼツは「グレンラガン」のロージェノムと同じ様な立ち位置ですね。そして熱血の部下がいるのも中島かずきのお約束ですね。
(それにしても中島かずき作品での檜山さん登場率高いのよね。以前読んだオトナアニメのインタビューでガオガイガーFINALについて語られてて~結構最近のアニメも観られてるのかなと感じ~多分その頃から檜山さん好きなんじゃないかなぁ。それがヴィラル役に繋がり(オーディション爆笑だったらしい)、キルラキルに繋がり今作にもつながってるのかなと)
「熱血」キャラ、展開は中島かずき作品に欠かせない要素ですが、今回主人公側は大局に振り回される流浪の民的な位置なので、「熱血」キャラは敵側・レッカ凱帝国に多いですね。
熱いバトル中の掛け合いの熱いセリフ、テンポの良さは小気味良くさすが中島かずき脚本だなと感じました。

ゼツはキャラクターと共に散り際なんかもロージェノムと似てますね。


基本的には「天元突破グレンラガン」と同じ構造、構成のはずなんですが、「グレンラガン」ほど熱くはなれなかったですねぇ。

その原因は、「物語の展開のさせ方」と「敵キャラの思惑の描き方」にあると思っています。

 

「壁」を神と考える物語前半の「敵」としてのレッカ皇帝ゼツの描き方…最初このゼツは世界の真実を全て知ってるキャラなのかと思ったら、そんな事はなく、特に主人公達の憎むべき敵・戦うべき相手として戦うのではなく、なんか流されるままに戦いに巻き込まれて対立するという展開・物語の運びに「納得」がないのです。
なんかゼツにはゼツの思惑があり自分の正義のために相容れない主人公側と対立するというのなら良かったのですが、その「思惑」が語られず(結局ゼツはシステムの事はなんも知らんかったのよね)、「壁」を神聖視する意味はよう分からんでした(何か裏の事情を知っているが故の行動・理念等ではなかったのね…)。

 

そして、物語後半の「敵」ルドルフの描き方についても同様の問題があります。こいつが裏で色々と企んでいるらしい事・黒幕なのは視聴者的には分かっていたのですが、
その「思惑」が、何を考えているのか分からない行動の描き方、物語の展開に「納得」がなく物語に入って行けず熱くなれないのです。

敢えて語らず「驚き」を残すという演出もあるのでしょうが、それが大して意味をなしていないというか「納得」のなさだけが残る物語展開、構成となっているのが残念でしたね。
敵キャラの「思惑」を描きつつ「納得」のある話の展開が描かれていれば熱く物語に入って行けたのですが、「グレンラガン」と比べると、主人公達が倒すべき敵・立ち向かうべき「敵の思惑」が早い段階ではっきり示されておらず、なし崩し的な展開で流されるだけの主人公側に何に替えても立ち向かうべき理由、熱血が足りず物足りなさを感じてしまい、そこが残念な点なのです。


と、ここまで中島かずき脚本について語り、シリーズ構成・脚本については「中島かずき」らしさを感じたのですが、
「バック・アロウ」という作品について「谷口悟朗」らしさという物を感じる事はありませんでした。
(谷口悟朗らしさとは何かといわれたらまた難しいのですが…)
谷口悟朗中島かずきが元々似た者同士で「中島かずき」らしさの中にもしかしたら「谷口悟朗」が居たのかも知れませんが、
監督「谷口悟朗」を感じる事がなかったというのもこの作品が可もなく不可もなくとなる原因なのかもと考えています。


「バック・アロウ」のインタビュー記事かなんか読めばそこら辺りを感じる事も可能なのかもしれませんが、
「作品」から「谷口悟朗×中島かずき」の化学反応なり、相乗効果なりの結果を感じる事が出来なかったのは残念でしたね。


(個人的には中島かずきさんには別のとある監督とのタッグを見てみたい(プラス音楽は田中公平さんでね)と思っています…)

 

あと、最後がよう分からんかったね…。主人公達は1人の人間の赤子・御子を救うための「システムの中の世界」の人間だと思っていたのでミクロな存在だと考えていました。

それが最後、地球に行く?という展開にえ?どういうこと?主人公達の世界と地球は地続きの世界なの?と良く分からなくなりました。

最後の最後にそこら辺もちょっとモヤっとしてますね。

 

以上