アニメ「月が導く異世界道中」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「月が導く異世界道中」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。


正直言うと、視聴前はそのタイトルの感じから全く期待していなかったのですが、いざ視聴してみるとかなり良かったです。

2021年夏アニメの中で一番良いんじゃないかな(まだ全ての作品を観た訳ではないですが)


異世界転生/転移・転送の最強系主人公物は数多くありますが、この手のジャンルの作品で自分が好きな作品は片手で数えるほどしかなく、
オーバーロード」首位は揺るがないのですが、この「月が導く異世界道中」はその「オーバーロード」に次ぐ面白さがある良作品でした(№2です)。
(おそらく「オーバーロード」好きな人であればこの作品好きなんじゃないかなぁと思われます)
2期も決まっているみたいで楽しみです。まぁ一部、思うところはあるのですがそれも含めて今後の展開を楽しみにしようかと思ってます。


それでは具体的に色々と述べて行きたいと思います。

 

まず思ったのは、なるほど、この作者は
時代劇の黄門様一行無双、将軍様無双、お奉行様無双~最強主人公一行、戦ったら負けない一行~を観て(思い出し)、
異世界世直し無双を思いついたんだろうな、と感じました。
昨今の「異世界+○○」ジャンルに「異世界水戸黄門・世直し(時代劇)」で挑んだという訳ですね、その発想がまず面白いです。

 

ギャグ要素も交えて話もテンポも良く進み、そのコンセプトも早い段階から分かり面白いです。

そして何よりこの作品が他の多くの最強物と違って良い所(「オーバーロード」と共通して良い所)は、「強さ設定」がシッカリしているという点です。


作者の中でのそれぞれのキャラの強さがシッカリ数値化できており、基本的にその数値を上回らない限りどう足掻いても強さ・勝敗はひっくり返らないという設定が作者の中に確固たるものとして存在している、と感じられる造りが良いのです。


以前「オーバーロード」の感想でも書きましたが、他の最強系主人公物では、油断から(一時的にでも)不利な状況に陥ったり窮地に陥ったりするその展開に、作者の中の強さ設定の出来ていない事が感じられ「納得」がない作品が多いのです。

 

強さ設定…別に作中、戦闘中で明示しなくても良いのです。それとなく視聴者に、主人公や仲間の強さを示し、それとの比較で敵の強さを推し量れるように見せれば良いのです。
それは「レベル」や「戦闘力」的な物をステータスとして見せるのではなく、この作品でいえば、たとえば主人公と龍の強さの比較として、「8:2の契約」という風に表されています。
また物語終盤辺りでは主人公が弓道の精神集中の所作により魔力が増大し、その魔力の強さが女神級になった事が表されています。
(この精神集中を5~6回繰り返したとあり、元の魔力が5~6倍になって女神級になったという設定…もしかしたら龍や雲の与り知らぬところでも行なっていたかも知れませんが)

という様に、それぞれのキャラの強さが作者の中でシッカリと数値化できている事が分かるのです。


他の多くの最強系主人公物作品ではこの強さ設定(数値化)が出来ていない作者が多く、たとえレベル等で数値化出来ていたとしても「納得」のない設定・展開である事がほとんどなのです。
それは例えば、最強とされる主人公のレベルが200に対し、レベル120や150のキャラとの1対1の戦いでも追い詰められたりと数値化の意味のない、納得ない展開を描いていたりする…作者の中に確固たる強さ設定が存在しない事にガッカリなのです。数値の上下を覆すなら相応の理屈付けが必要なのですがそれも出来ていないのです。


多くの最強系主人公物は、ただ話の山場を作りたいがために主人公をピンチに陥らせ、この強さ設定がおざなりになるので納得がなくほぼほぼ好きくない作品ばかりとなるのです。

 

そんな中、この作品は「オーバーロード」と同様に作者の中にしっかりとした強さ設定が存在し作中の描写でそれを感じ取る事が出来るので納得のある良作品となっているのです。
だからこそ最終話の強敵との対峙も、早よ指輪外して全力で戦わんかなとワクワクしながら待ってて、そして満を持して限定解除の演出、圧倒する強さにも納得があり一緒に熱くなっても燃えて戦いが観れる訳ですよ。
(これが、納得のない謎パワーアップだったら冷めてしまいますからね)
この辺りが他のなろう系・最強系主人公物と一線を画す所なのです。それが分かってる作者なのが良いのです。

 

 

と、ここまで良い点を書きましたが、以下はちょっと気になった点を書こうと思います。

 

冒頭でも述べた様にこの作品は「異世界水戸黄門・世直し(時代劇)」物だと考えていました。
ギャグも多くもテンポも良くコミカルな感じで進む作品だと思っていたのですが、それが変わったのが11話。

 

優しそうなオークがなんかフラグを立てた辺りから嫌な予感はありましたが…、あ~そうなるのか…、
ヒューマンやっちゃったのか…な主人公闇落ちの11話。

いや…黄門さま自ら手を汚しちゃダメでしょ…暴れん坊でも「成敗!」で部下に斬らせてますし…。


これ(原作未読)今後の展開どうなるのか知らんけど、もし女神をラスボスにして女神倒してノーリスクで元の世界に戻るという展開になった時、この11話の一件が尾を引く展開になるのかね…と不安を感じます。
まぁ主人公自身が元の世界と決別するための決心・覚悟の材料として必要なため敢えて・意図して作者が描いたとも取れますがね…。どうなるのかね。。。

 

あとは今後戦いが大規模になると助さん角さんの力だけでは足りず黄門さまも前線で戦う必要が出てきて、そこで無自覚に大量のヒューマンなり魔族なりをやっちゃうよりは
この11話できっちり主人公自身の手を汚しておこうという作者の考えなのかも知れませんが…。


コミカル・ポップな展開が続く事を期待していた自分としては11話の展開には、ちょっと残念というか驚いた感はありますが、
シッカリとした設定を作る作者の紡ぐ今後の物語を楽しみに待っていたいと思います。

 

作品の評価としては、「良」となります。


以上