録り貯めしていたアニメ「前橋ウィッチーズ」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。
かなり良かった作品。おそらく今期(2025年春アニメ)では筆頭となるのではないかと感じる面白さの作品ですね。
俺が第1話を観てまず思ったのはこれは「おジャ魔女どれみ」なのかなでした。制作がサンライズ、バンナムということでサンライズはアイドル物だけでは飽き足らず魔法少女物にまで手を広げてきたかと思ったのですよね。
魔女見習いの少女たちがお店をやりながら魔女になることを目指すという設定がまんま「おジャ魔女~」なのですよね(更に言うならばお店が花屋ということは「おジャ魔女どれみ♯」の設定となりますね)。
しかし、1話を観進めていくと変身して歌を歌い出したりしてその認識が、あぁこれはアイドル物…「アイカツ」(サンライズ)なのかぁと変わりましたね。魔法を使うことが直接的な問題の解決になるのではなく、不思議空間というかキラキラしたステージで衣装チェンジして主人公たちが歌うことで問題が解決するという流れが「魔法少女物」というより「アイカツ」の流れだと感じたのですよね。
で、内容について語っていくと…お話・脚本のディテールの良さ、キャラにフックを作り惹き込ませる構成だったりと脚本・シリーズ構成の巧さがありますね。
アズの話やチョコちゃんの話でそれが顕著で、第1話の初登場時からイラっとしたアズのあの性格のきつさ、口の悪さはあまり長く引っ張る(4話も5話も長々と引っ張るような話ではイライラが溜まり過ぎてしまう)のではなく第2話第3話でイライラが溜まり過ぎ前に早々に片付けるというその判断・物語構成が良いですよね。またチョコちゃん話にしてもそれまでは主人公とちょっとキャラ被り気味な感じがあったのを第6話のCパートでギョッとする意外な一面を見せての引きという構成…。
そして語られるチョコのヤングケアラー的な問題…。魔女見習いの魔法はお店内限定でしか使えないということからチョコは店から自宅へ戻る際に店で過ごした時間(魔女見習いとして働いていた時間)を毎回巻き戻していたという設定…。
祖母の世話や弟妹の面倒も看なければならず、しかしそれ自体を魔法で解決することはできない…、その一方で「なぜ自分ばかりが…」「他の子たちが放課後友達と遊んで楽しく過ごしている様に自分も介護、世話から解放されたい」という思いからチョコが考えたのが時間を巻き戻すという方法だったのですよね。。。
倍疲れることが分かっていてもそれでも「普通」の高校生が楽しく友達と過ごす様な時間を欲した…、「他の子」「普通の家の子」とは違う現状いっぱいいっぱいの自分…全然ハピハピではないのに自分の事をハピハピチョコちゃんと呼び(演じて)「普通」の高校生の様に(無理して)過ごしていて、そんな中での皆が祝ってくれた誕生パーティーに水を差されたことに対する舌打ち・悪態、という行いに対して俺は理解できたし納得のある設定、物語展開に面白さを感じたのですよね。
アズの話にしても、第1話を観た最初は何だこのキャラ?という感じだったのですよね。口悪く文句ばかり言う割に自分は何も動こうとしない…。これがもし自分は自分のやり方で魔女を目指す、もっと効率的なやり方・アズは孤高に他者に頼らず自らの努力で魔女を目指す、というキャラならまだ分かるのですがそんな(努力)そぶりは見せずただ協調性がない我が儘キャラにしか見えずなんだコイツとなっていたのですよね。なので再序盤(第2話第3話)で早々にアズの秘密・悩みを明らかにする構成が良かったのですよね。そしてアズの秘密である太り気味の体系について…。アズの願いとしては、今は店内限定で魔法で痩せた姿になることが出来ているのですがそれをいつでもどこでも(外の現実世界でも)魔法を使って痩せて見える様になるというもの…。
それを聞いたとき最初は、いやいやいや魔法に頼らんでも自分の努力で何とでもなるやろ…、店内限定で痩せた姿になる魔法なんて使って無駄に疲弊する意味もないやろ…、魔法を使って見栄を張ったって意味ないだろと思ったのですよね。
しかしキョウカやマイのSNS関連の話を観終えた後で感じのは、あぁ魔法が使えるあの店内空間は加工アプリで(写真、動画の)容姿を弄れる/盛れるSNS上の幻想空間を表しているのだな…、アズの抱える秘密・悩みというものは今のSNSユーザの抱える悩みというか闇でもあるというメタファーなのだなと認識を改めてより今作の面白さを感じられたのですよね。。。
SNS上での問題やヤングケアラーを扱った問題などの社会派なテーマもありながら、キャラの魅せ方・ストーリー的なフックの作り方/惹き込ませ方でのエンタメ性、納得のある・深みのある設定、物語展開の構成の妙…、と興味深い面白いお話・脚本となっているのですよね。
ただ物語序盤~中盤の展開を観ていてちょっと疑問に思ったのは、各キャラの当番回でだいたい一人につき2話を使っているのですよね…。2クール編成ならまだしも5人のメインキャラが居て一人につき2話を使うのは構成として如何だろ?と。。。(単純計算でキャラの紹介・深掘りで10話使う計算)
(これは余談で、かなり前の作品の話になりますが俺が「優」評価している作品「カレイドスター」…、この作品の1話1話の密度が濃いからね。特に第2話なんか、「特例入団した主人公に対する同期からのやっかみ」から始まり「トップスターレイラとの対立/レイラからの試練」、「みんなに認めてもらえるよう孤軍奮闘する主人公・そら」、「ミア、アンナとの和解・雪解け」、「ゴールデンフェニックス披露」とこれら全てを1話(第2話内)に収めている密度の濃さ。。。今の時代のアニメであればこの密度の内容のお話は確実に2~3話くらいに分割されると思うよ…。
これだけの要素を詰め込んでいながらも描写が足りないとか説明不足と感じることがなく、たった1話のエピソードでの満足感が凄まじいことになっているのが素晴らしいのですよね。この他にもロゼッタ回やサーカス回、サラ回等をはじめ1話の満足度が高い話ばかりなのですよね。
最近のアニメではこう満足度の高い作品に出会えていない感じなのですよね…、というお話)
と、各キャラのエピソード構成としては文句なく面白い作りとなっているのですが、全体のシリーズ構成として見た場合ちょっとその構成が不安だったのですが、最終話まで観てまぁ…杞憂だったかな、と感じましたね(少し思う所はある…)。
各キャラのエピソードが終わった後は終盤の第9話~第12話で大きなドラマ・山場を造りキレイに解決し纏まっていたのでこれはこれで良かったのだなと思ったのですよね。
「魔女は/魔法はもういいかな」となる主人公5人の決断も、決して無理をしている/強がっているのではなく彼女たちの願いはどれも魔法を使わなくても叶う願い、若しくは5人が出逢えたことで変化が起きて結果的に願いが叶ったためにもういいかな、となったという事にも納得があるお話・展開になっているのですよね。
ただちょっと思う所があるのは…、主人公・ユイナについて。他の4人には当番回・深掘りエピソードが各2話ずつくらい割り当てられていたのですが、ユイナの当番回という当番回がなかったのですよね。ユイナ自身の口から皆にちょろっとユイナの悩みが語られる(ウザがられて段々と人が離れていく)ことはありましたが他の4人ほどに尺を使った当番回という当番回がなかったのですよね。
最終話がユイナ回も兼ねているといえばそう言えるのですが、ユイナ回としてはちょっと物足りない感じだったのですよね。この辺りが「作品全体としてみた時のシリーズ構成」に対する俺の懸念だったのですよね(メインキャラの紹介・深掘り回だけで10話を使う計算となり最終盤の盛り上げが弱くなる)。。。
まぁしかし最終話までその点については(ユイナ回不足)観てそこまでマイナスには感じなかった…、1クール作品としての満足度は高かったので良質な脚本・構成で面白い作品だったと思いますよ。
あとこれはどうでも良い事で俺が個人的に思うことなのですが、今作は「アイカツ」シリーズとは違い時間帯も遅く対象年齢も高い(女児向けではないと思う)のでアイドル要素/歌要素はもう少し薄めでも良いかなと、その分だけ物語を濃くしてくれた方が個人的には良いかなと感じたのですよね。
他に魔法の設定についてちょっと気になるのが、チョコの魔法の時間を巻き戻すというのは結構すごい魔法なんじゃないの?という気がするのですが特にポイント消費することなくチョコの魔力だけで賄えるみたいなのですよね。そこら辺の魔法の設定があんまよう分からんね…。まぁ俺としてこの作品は「魔法」が(魔法で問題を解決することが)主ではないと思っているので大して気にしなくて良いのかなとは考えますが…。
まだこれから先も続きが作れそうな感じで終わったので第2期があるなら次はしっかりユイナ回も観たいと期待している続編が楽しみな作品で
作品の評価としては、「良」評価となります。
(何気に2025年アニメとしてはこの「前橋ウィッチーズ」が初の「良」評価アニメでしたね)
以上
2025年7月16日追記
なんか「前橋ウィッチーズ」について、「前橋」である必要性/意味がないという感想があるらしいというのを見ました。タイトルに入っているからその地名の意味を求めるのは分からんでもないけどさぁ何より大事なのはまず作品が面白いかどうかでしょう…。作品として面白くなかったというのであればさらにそこへツッコミを入れる、いちゃもんをつけるという思いも理解しますが面白かったのならそこは些末な問題でしょう…。
それにその「前橋」問題についてはミクロではなくマクロな視点で見れば解決、理解できます。タイトルの「前橋」は言ってしまえばご当地アニメとしての町おこし、聖地としての誘致がまず一番の目的なのでしょうね。
で、「前橋」の必要性がない/意味がないと宣っている人は「前橋市」特有の/「前橋」である必要性のあるエピソードを入れろと言っているのでしょうが…、そんなことはしなくて良いのです、というかやったらダメなのです。作品の舞台が「前橋市」である、くらいで良いのです、充分なのですよ。
もしご当地ネタを無理くり作品へ入れ込んだとしたら…あの目も当てられないほど酷かった「邪神ちゃんドロップキック」の北海道編の様な惨憺たる有り様になってしまいますよ。そうなってしまうとご当地アニメ/聖地としての誘致作品としても明らかな失敗なのですよね。ご当地ネタを無理やり入れ込むことを優先してエピソードを制作することで作品として失敗、駄作となり誰にも見向きもされない作品になってしまうと聖地誘致どころではない、本末転倒となってしまうのですよね。
なので、「前橋ウィッチーズ」の作品としての面白さを優先した造りは正解であり成功なのですよね。
で、更に言うならば(ここからが本番とも言える)今作…、敢えて「ウィッチーズ」シリーズと呼ばせてもらいますが…、「ウィッチーズ」シリーズは「ラブライブ!」シリーズのサンライズの知見を活かして制作されているプロジェクトなのではないかと考えています。
それは…、この「ウィッチーズ」シリーズが群馬県とのコラボであれば「前橋ウィッチーズ」の続編として群馬県内の他の市町村で例えば「高崎ウィッチーズ」、「伊勢崎ウィッチーズ」、「みなかみウィッチーズ」、というシリーズ展開を想定して制作されているのではないかというものです。…もしかしたら群馬県にとどまらず埼玉県の「川越ウィッチーズ」や千葉県の「木更津ウィッチーズ」なんかもあり得るかも…。
「ラブライブ!」シリーズが各地方の高校のスクールアイドルという設定でシリーズを展開している様に、この「ウィッチーズ」シリーズでも各ご当地を舞台に「ウィッチーズ」の物語を展開するシリーズ制作を考えられているのではなかろうかと思っています。
しかもこの「ウィッチーズ」シリーズの場合、頭の地名を変えるだけで「○○ウィッチーズ」と地名がダイレクトに入る分かり易いタイトルで宣伝、聖地誘致効果も大なのですよね。
…と、「前橋ウィッチーズ」という作品単体で見るのではなく(タイトルの「前橋」に必要以上に執着する意味はなく)シリーズ展開も想定されている(かも知れない)ご当地アニメ/聖地誘致アニメ作品としてみれば「前橋ウィッチーズ」というタイトルにも何ら引っ掛かる事はない、すんなり受け入れられる作品となるのですよね。
以上、追記終わり