漫画「SPY×FAMILY」 ~感想

ジャンプ連載の某漫画ロス…その渇きからの救いを求めて面白いジャンプ系漫画がないかと探していた時に手に取ったのがこの「SPY×FAMILY」でした。
(一応、他に候補として「呪術廻戦」、「チェンソーマン」があったのですが、「呪術廻戦」はアニメ化が決まっていたのでアニメで良いかぁ~、となり、
チェンソーマン」はグロい、鬱だ~という評判を聞いたので「SPY×FAMILY」となりました)

 

既刊コミックス1~5巻を買って読んだ感想ですが…、う~ん「普通」に面白い漫画でした。


面白いと評判になる理由は読んでいて充分わかるのですが、累計発行部数500万部以上、初版100万部~と騒がれるほど面白いかというと…、
ちょっと騒ぎ過ぎかなと感じるのです。

 

決してつまらないという事はなく、「面白い」か「つまらない」かのどちらかでいうと間違いなく「面白い」の方なのですが、
その「面白さ」のレベルは自分が漫画に求める「面白さ」の普通レベルor普通よりちょい良いレベル~で100点満点の点数でいうなら70点or72~73点数の面白さなのです。

 

悪いところ・ダメな点というのはほとんどないのですが、突出して良いところ・巧い展開というのもないのです。

 

作者の方はよく少年漫画を読んでらっしゃるのでしょうね。
キャラクターの設定や話の展開、構図は良く出来ていると思います。
ただ、ここで良く出来ているというのは巧いという意味ではなく、良くも悪くも「優等生」の造りのであるという意味なのです。

 

なので、人気があるというのは理解できるのですが…、自分としては特筆すべき点があまり見出せない~目新しい設定や巧い話の構成、斬新な構図などがない
平均的な「面白さ」の漫画という評価になります。

 

(あと、若干マイナス評価となる点を付け加えるなら、「コマ割り」が少し気になります。
これはこの作品に限らず最近の漫画家の多くに感じる事なのですが、「コマ割り」が綺麗すぎると感じます。本当に「優等生」のコマ割りだなと感じるのです。
別に悪い事ではないのです。無闇矢鱈に変則ゴマを使えば良いというものでもありません。下手に使うと詠みづらく・頁が汚くなってしまいますからね。


ただもう少し、「優等生のコマ割り」ではなく効果的な演出を生む「コマ割り」を考えても良いのかなと最近の漫画を見ていて感じてしまうのです。。。

 

また、この作品に関していえば、たまに無駄に大ゴマ使うのが気になりますね。。。)


と、マイナス評価点を書いていますが、最終的には平均点ちょい上になるのでもちろんプラスとなる点もあります。

 

まず、絵が上手いですね。それぞれのキャラクターのデザインも良いですが、デッサンがしっかりしていてコマの中でキャラクター動いているのが良いですね。
漫画が好きなんだなぁ、色んな漫画を見ては研究・模写して描き慣れてるんだなぁと感じられます。


そしてこの「SPY×FAMILY」の面白さの重要な点・キャラクターはやはり『アーニャ』でしょう。


アーニャの「可愛さ・アホさ」はこの作品の肝でしょう。

 

コミックス1巻のおまけ頁に初期設定のアーニャが載っていますが、そこに載っている「性格悪いアーニャ」(おそらく心を読める能力のために他者へ心を閉ざした性格のアーニャ)では、今の人気は到底得られなかったでしょう。

今のアホの子・アーニャの性格設定だからこその人気だと感じます。
そして年も幼くして小っちゃく描く事でアホの子設定と相まって可愛さが一層増しています。

 

(この可愛さは「よつばと」のよつばに通ずるものがあり、おそらく作者の方は「よつばと」を意識して描いていると思われます。
別にパクりだとかいうつもりは全くなく、アーニャにはエスパー(テレパス)という設定が付加されていて、その能力を持っているために「よつば」との性格の差異もあります。

少し話がずれましたが、)

 

SPY×FAMILY」の面白さの半分は、このアーニャのキャラであるといっても過言ではないと思います。

 

と、このアーニャのキャラクターは大きくプラス評価となるのですが、一部アーニャのキャラ(性格・考え方)について疑問があります。

 

それは、コミックス4巻の21話~ちち(ロイド)が死ぬ未来を視たアーニャがその未来を何とか変えようと奔走する回において
「ちち しんじゃったら アーニャもへいわもだいぴんち」というモノローグのシーンがあるのです。

 

この『アーニャも~ぴんち』の部分に引っ掛かりを覚えるのです。


これはロイド死亡でミッションが終了し自分が捨てられるかもという「自分の身の安全を心配して」の考えであり
大好きなちち(ロイド)が死んだら悲しいやちち(ロイド)と別れたくないという気持ち・考えではないという描き方が疑問なのです。

 

確かにアーニャの性格は、たまに倫理や道徳より「自分のワクワク・ドキドキを優先する」という描かれ方がされていますが、他者の心が読めるはずのアーニャがそれなりの時間をロイドと共に過ごし、ロイドの真意もある程度は理解しているはずで、そんなロイドの死の未来を視て「自分の身の安全」を考えるアーニャの描き方に疑問なのです。

 

(無理やり納得しようと考えるなら、以前施設にいたときにその辺りの感情を失くしてしまったとかでしょうか…無理な設定ですけどね) 

 

アーニャが打算ではなく、たとえ任務が終わったとしてもずっと「ちち(ロイド)」と一緒に居たいと心から思うというエピソードが1~5巻までの中に1エピソードあれば少しは評価が変わったのですがね…。

 

 

上記の様な気になる点はありますがアーニャのキャラはプラス評価である事は間違いありません。ただこのアーニャのキャラ以外にプラスとなる点が今のところないのです。

 

そして、この作品が平均点以上となるためには、キャラクターの関係性を大きく変える様なストーリー・話の構成が必要だと感じます。

 

おそらく作者の構想の中にはあるのだと思いますが…、もうコミックスも6巻となるのでそろそろ良いのでは…と感じます。


それは、作者がコミックス1巻のコメントで語っている~「正体を隠している」系の話が好き~になります。

 

「正体を隠している」系の話の盛り上がり所は、やはり【秘密バレ・正体バレ】回です。

 

ロイド・アーニャ・ヨルの三者それぞれが秘密を隠している事からいくつかパターンが考えられ2回3回ほど【秘密バレ・正体バレ】回を作れます。
たとえば、
まずは「ヨル」が「アーニャ」の秘密を知る
①ヨル×アーニャ
次に「ロイド」が「ヨル」の秘密を知る
②ロイド×ヨル
そしてロイドがアーニャの秘密を知る
③ロイド×アーニャ

 

そして最後は組織にも全部バレる…
という感じで盛り上がる話が作られる事を期待しています。

 

ただね、この話を描くためには、まず秘密を知っても自分の上司・組織に相手の秘密を報告しないという信頼関係~組織より強い絆を描く話が必要なんですけどね。

 

そろそろいい加減そういうキャラの関係性を大きく変えるという話が欲しいと感じているのです。(今月発売の6巻にあるかな?)

 

(コミックス5巻時の)今の関係であれば、たとえば「ヨル」が組織から「夫(ロイド)は国の敵だ、消せ」と店長から命令されたら多少抵抗はしても最終的には命令を受け入れるのでは、と思われます。


長年仕えていた組織を裏切ってまでロイドを取るという選択を今のヨルではしないだろうと思われるのです。

もし、そういった命令が下されたとしてもロイドを選ぶという、ロイドとの絆を深める物語がいまだ描かれていないのです。

そんな物語の大きな転換となる話があってももう良いんじゃないでしょうか。

 

アーニャキャラ以外の評価として、この辺りの物語・お話としての盛り上がりに今後期待したいですね。

 

最終的には、映画「トゥルーライズ」の様な関係になるのを望んでいます。

 

以上。