アニメ「彼女、お借りします」 他3本~感想

録り貯めしていた夏アニメを一気観しました。
・放課後ていぼう日誌
富豪刑事
・天晴爛漫!
・彼女、お借りします

ここで挙げた作品いずれもキャラクター設定に問題がある作品となります。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。


「放課後ていぼう日誌」

女子高生+趣味系のアニメ作品。
キャンプであったり天体観測・マイナー部活であったりと色々ありますが、この作品は「釣り」部活のお話となります。
この作品を観て釣りに興味を持つ人も居るだろうなと思わせる良い造りになっています。
しかし、総合的には可もなく不可もなくという作品。
その原因は、キャラクターの弱さの問題。
特に部長のキャラと先輩キャラが問題です。

やる気のない部長、大人しい・口数の少ない先輩というキャラは、釣り初心者の主人公を引っ張っていく、物語を引っ張っていく役としてはどうしても弱いのです。
キャラは喋ってこそ、何を考えているか、そしてどう行動するかを描いてこそのキャラクターとなるのです。それなのにほとんど動かない、喋らないではキャラが立たないのです。このキャラ付けは絶対的に損しています。実際にこんなキャラクターの女子高生居るわけないしこの部長のキャラは明らかに造り方損してますよ、もったいない。
そこが残念でしたね。


富豪刑事

ミステリ・サスペンス物としてもバディ物としても弱い作品でした。

富豪というキャラクターは別に構わないのですが、お金で解決できない事もあるだろうに…そういうエピソードを挿入しても良かったんじゃないでしょうか?
事件を追っている中で、その真っ最中にお金で解決していくというのは現実にはあり得ないのですが(即時ではなくある程度時間を掛ければ可能でしょうけど)、そこはまぁエンタメ重視のアニメ的嘘をついているというので許容できます。
ただね、AIのヒュスクがお金で解決していくその様子を視覚化した映像・演出が全く面白みが無いのですよ。もう少しなんか視覚的に面白く工夫できなかったのかしら…。そこがセンスの見せ所でしょうに…。

物語終盤の展開も、関係者の口封じ、警察上層部にも手を回すなど話を多く広げた割には、その真相が意外とショボくて肩透かし感が凄まじかったです。
富豪刑事の父親がラスボス~からの実は…の予想外の展開はありましたが、その展開についても、あれ?ヒュスクのシステムってそんな簡単に他人が成り済ませるの?ザル認証だね、そんな誰でも使えるシステムまずいんじゃないの?と疑問が残ります。
また、富豪刑事のキャラクターについても問題で、ほとんど人間っぽさを見せないのがキャラとして失敗しています。観ている限り相棒?ハルが死んだとしても涙ひとつ流しそうにない、そんな描かれ方をしています。
終盤の船上のシーンで、富豪刑事はハルに囮になれと言って別れて(自分自身の目的を叶えるために)先へ進みますが、一歩間違えばハルは死んでいてそれっきりの別れになっていてもおかしくない状況でした。絶対的に「信頼している」という様な関係はここまで描けていませんから、多分涙ひとつ流しませんよ。
もう少し富豪刑事の内面を描く、心の変遷、関係性の変化を描くという事をやるべきだったと感じます。

あと、作品自体とは関係ない所で、
新・旧毛利小五郎が会話しているのが面白かったですね。この二人は何か会話したのかな?「最近、コナンどうなの?」とか会話したのかな?といろいろ考えてしまいます。

以上


「天晴爛漫!」

主人公・天晴のキャラクター以外はそれなりに楽しめた作品でした。しかし主人公のキャラクターが好感・共感、納得がない造りになっていてもったいない作品です。
主人公・天晴はメカいじりにしか興味がなく、人に関心を示す事がない人間味のないキャラクターとなっています。キャラクターデザインも普通の人とは違う傾奇者然と描かれています。
キャラデザもおかしいのですが…性格との整合性がない(他人に対し興味がないなら意識して傾く必要もないはずで、自分で顔にあのメイクをしてる様子を想像するとどうにもその性格と合わないのです)
しかしキャラデザよりも問題なのはやはり天晴のキャラクター・性格なのです。登場人物のキャラクター・性格は「何に対し喜び、怒り、悲しみ・涙するのか」を描く事でキャラクターと成って行きますが、主人公・天晴はその感情が全くと言って良いほどないキャラクターとなっているのです。幼少の頃に世界の広さ・未知が広がっている事を知り、それに対する憧れが描かれますが、その経験が無感情になる理由にはなりません。
(描かれてはいませんが、まぁおそらくは周りから理解されず段々と心を閉ざしていったという事なのでしょうが…中盤以降の展開を考えるとこれではちょっと無理が出てくるのです)
序盤の天晴は本当に他人に対し無関心で、もし自分のメカいじりの研究や実験の失敗で誰かが死んだとしてもその事に対し嘆き悲しんだり悔んだりしないのではないか、と思える様な描かれ方をしています。
(上で述べた「富豪刑事」の主人公のキャラクターは、子供に泣きつかれて頼みを聞き入れる分まだ人間味があります)
メカ以外に興味がなく基本的に無感情で全く人間味がない主人公に好感、共感、興味が持てる訳がありません。しかし、制作側もそこは多少は意識・理解していて、天晴が無表情・無感情な分、意識的に小雨を感情豊かに行動的に描く事でバランスを取ろうとしています。
しかし、いくら副主人公・小雨が頑張ってもタイトルに名を冠している正主人公・天晴が無表情・無感情で好感の持てないキャラで描かれていてはとても物語を引っ張ってはいけないでしょう。
そして、そんな無表情・無感情の天晴が中盤以降、徐々に人間っぽさが出てくるのですが、ココに「納得」がないのです。天晴の無表情・無感情のキャラクターは十数年を掛けて形成されたはずで、それがたった数ヶ月?の人との触れ合い・付き合いでアッサリ変わるもんだねえ…と。
別にアメリカに着いたからといって天晴の価値観を180度変える様な衝撃的な出来事が起こった訳でもないのに、天晴は徐々に人間っぽさを出して他人に対し優しさ・思いやりを見せる様になってくるのです。
もし天晴が人間ではない~人造人間・人工生命体の様な存在であり初めて人と触れ合って心を持った~等の設定であれば「納得」しますが…、天晴が日本に居た頃も、別に人との触れ合いが全くない訳でもないのに、急に「物語の都合上」「天晴の成長の成果として」人間味を出してくる展開に「納得」がないのです。

制作側はこの作品を「天晴の成長物語」としたいのでしょうが、好感・共感の持てない「主人公」でそれをやろうとしてもその「成長」を描く前に視聴者が離れて行ってしまいますよ。無表情・無感情の「天晴の成長」を描くなら小雨を主人公にして描くか小雨とダブル主人公にするなどすべきだと感じました。…それは例えば「ダイの大冒険」のダイとポップの様な感じでね…。
ダイの大冒険」は「ポップの成長物語」として読む事が出来ますが、これはポップを主人公としていては最後まで・大魔導士ポップの成長までを描く事は出来なかったでしょう。ダイという正統派主人公(好感の持てる主人公)を描いているからこそ、そこに読者は付いてきて、そしてその脇で描かれるダメ男・ヘタレのポップを描き続ける事が出来、その成長を描き切れたのだと考えます。
制作側は「作品」の「主人公」の「キャラクター」についてもう少し考えるべきだったと思います。

天晴の「キャラクター」以外はそんなに悪くないのにもったいない作品ですね。。。脚本も悪くなく3~4か所「あ、良いなぁ」と思うセリフもありましたよ。
小雨は良いキャラクターで、提供バックで愚痴を零す小雨の小雨劇場・小雨爛漫の演出も良かったですね。小雨が撃たれた後の話数では小雨劇場から小雨が居なくなるのも話を盛り上げる良い演出だったと思います。

以上

 

「彼女、お借りします」

好感の持てない主人公の物語。作者自身を投影した主人公の人物像なのかもしれませんが、リアルに描きすぎると主人公に好感持てなくなるんだよ、という事を理解しないといけない。。。
主人公に好感が持てない物語・作品は楽しく観れない~ダメなんだよ…、そこんとこ分かって創作しないと…。
「エンタメ」という事を意識・理解してリアルでなくても良い・多少の脚色はあっても良いので、美徳となる点を主人公のキャラクターに描くべきなんですよ。
クズなダメ男の成長物語を描くという場合であったとしても、どこかしら好感が持てる点・一本筋が通った性格というものがないとイライラして楽しく観てられないのよ。
特にハーレムものやるなら主人公に不快を感じる様なキャラ付けやったらダメって分からないかなぁ。良い所がない主人公のどこに・どうして女性キャラが惚れる事が出来るんだよ…。そしてダメ主人公の成長を描くにしてもたった数ヶ月かそこらの出会いや交友・付き合いで、人間の根本的な性格は変わらんだろ…。変わるのならそれは描こうとしてたリアルとは程遠いものになるよ、そこに理解が及ばんかなぁ。
そんなエンタメ軽視の設定・構成に不満、ガッカリなのです。
フェリーから落ちるエピソードも非リアルであり(落ちたとしても船停めて助けるだろ…。また捜索しても見つからない様な状況で運よく浜辺に打ち上げられる事はないだろ、と)、ここで漫画的な非リアルを・嘘を描くなら主人公キャラに嘘をついて少しでも好感持てるようにエンタメを描けよ、と感じるのです。

ヒロインの設定に関しても納得のいかない点があります…。レンタル彼女というネットに情報を載せておいて家族にバレたら困るとか言っても全く説得力ないのですが…。

そしてそのヒロインがフェリーエピソードを機に主人公に惹かれる?という展開になっていきますが、その段になって初めて作者が気づいたのか「あれ?この主人公良い所ないぞ」と急に差し込まれる取って付けた様な主人公の小学生時代のアサガオのエピソード。
…だ~か~ら~、そういうエピソードを最初(第1話)から描かないといけないと…なぜそういう構成ができないのかね。。。
「遠慮がち・気が弱い、要領が悪いけど優しい」や「異性からは人気ないが友達想いで同性からの人望は厚い」などの性格を最初から入れる事は出来なかったのでしょうか?「友達思い」という性格なら海のエピソードで主人公を殴った友人の方がよほど良く描けていて、この友人が主人公であった方が面白くなるだろと感じますよ。

中盤以降の展開はキャラの関係性はほとんど変わらずそのまま最終回まで行ったって感じで終わりました。まぁ2期あるみたいだし…1クールの最終話で告知するって事は最初から2期決まってたんでしょって造り…、最終回をきっちり締める終わりにしていないのも好感持てない作品ですね。…まぁこの辺りは最初から分割2クールと報じておけば「納得」はあったとは思いますが。

以上

 

(2020年10月05日23:33mixi日記投稿分)