劇場アニメ「映画大好きポンポさん」 ~感想

録り貯めしていた劇場アニメ「映画大好きポンポさん」を観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。


映画公開当時話題になっていたのでそのタイトルは知っていたのでかなり期待しての視聴でした。
結果は…、う~ん、、、いや全然悪くはないのですよ、しかし「優」評価作品を期待していた俺にとってはそこまでは…(「優」評価までは行かない)な作品だったのですよ。
期待値が上がり過ぎてたのかな。
いや、ホント全然悪くはないのです。


俺がアニメ感想の中で常々言っている作品の評価ポイント…物語構成の綺麗さがこの作品にはあります。
序盤~中盤~終盤の話の展開・構成と主要となるキャラクターの配置・設定・見せ方、納得・説得力のあるキャラクターたちの会話、
そして本編の登場人物・主人公と作中作の映画のストーリーとの対比等々、全てが計算されて構築されたストーリー構成は巧いと唸らされますねぇ。

 

今作の映画の尺は約90分、とポンポさんがベストと考える尺と同じ長さになっている様ですが、体感的には2時間あってもおかしくないくらいに見応えのあった充実した90分間でしたよ。
また作画・構図、演出も凝っていたりとキャラクター、物語構成、映像演出と全てにおいてレベルの高い作品でしたね。

(視聴後wikiを見たのですがあの銀行マンの話は映画オリジナルの展開だったようですね…もしかしたらこれ(主人公・ジーンの過去に関するエピソード)も
作中作の映画での主人公の過去を描く追加エピソードとの対比になっているのかも、と巧い構成になっていますね。
まぁあの銀行側が最後「HAHAHA、まいったぜ」みたいなノリで出資を決定する展開はちょっとご都合感がありましたがね…)

 


マイナスというマイナス要素はないっちゃないのですが、ちょっと評判からの期待値が高すぎたのでしょうね。
話の構成は綺麗に造られているのです「優」評価作品を期待していた自分としては、綺麗な構成だけど盛り上がりちょっと足りない(「優」評価を期待していた自分としては・熱く/燃える/鳥肌が立つ様な/涙が溢れる様な展開を期待していた自分としては)ちょっと弱いと感じてしまったのですよ。

 

あと付け加えるなら、今作「映画大好きポンポさん」…その評判は以前から聞いていたのですがタイトル以外はほぼ前情報なしでの視聴だったのですよね。なので最初はそのタイトルから主人公はポンポさんだと思っていたのですが、途中でジーンだと分かりそこから初めて話の方向性が見えた来た感じでちょっとそのスタートに戸惑ったのですよね。
まぁプロデューサーという立場のポンポさんを中心に置いた方がお仕事モノ(監督、プロデューサーのお仕事モノ)として見せるのに色々とお話を動かしやすい・便利である事、またビジュアルやタイトル的にもキャッチ―である事(ジーン監督を前面に押したキービジュアルやタイトルよりも)は理解できますが、映画がスタートしてからの十数分間がどういう見方をして良いか探り探りだった時間があったのが没入感を削ぐ・遅くする事になってる…と感じたのです。

 

(あと余談ですが、今作映画の視聴後「映画大好きフランちゃん」を読みました。「~フランちゃん」は女優の卵のお仕事モノな感じでこちらも「~ポンポさん」同様に納得・説得力のある展開でおそらく最初から物語の結末を計算して構築されたであろう綺麗な物語が描かれています。…が、終盤のフランちゃんの展開なんかはちょっとご都合感があるのですよね。
いやね、その前の後輩ちゃんのデビューの話などでドラマを作っているのは分かりますがもうちょっと強い盛り上げが欲しいと感じちゃうのですよ。これは今作(映画)の感想について上述したのと同じ「~ちょっと足りない、弱い」と感じる部分と通ずるんですよね。
なんか小ぢんまりと纏まっているというか、激しく大きく心揺さぶられる展開は起こらないけどしっかり綺麗には纏まっているというか、伝わるかどうかわかりませんが例えるなら「進研ゼミの漫画」の様な小ぢんまりとした・小綺麗な纏まり方なのですよね。
と…もう少し盛り上げ幅が欲しいと感じるのが難点といえば難点ですかね。

 

…上記についてもう少し補足するなら、面白い作品を作るために「短く」綺麗に纏める事の「短く」が目的になってはいけないという事。「短く」纏めるために本当ならもうひと展開盛り上がり所が作れるのに「短く」を優先して作らない、となってしまっては本末転倒、ダメよねという事。

話は少し逸れますが、俺が激しく心揺さぶられる様な「燃える熱い展開」や涙が出る程「笑える展開」というものに必須・効果的な手法と考えているのは『波状攻撃』です。

熱いセリフや熱い展開で一度観客の心・気持ちを掴んで上げたらその熱が冷めない内に畳み掛けるように熱いセリフや熱い展開をまた持ってくる、そういう波状攻撃。

お笑いで一度笑いが起こったらその笑いが収まる前にそれに被せる様に矢継ぎ早にこれでもかと笑いのツボを突いてくる波状攻撃。

そんな波状攻撃が激しく心揺さぶる「燃える熱い展開」や涙が出る程「笑える展開」に繋がると考えています。

…で、今作「~ポンポさん」は単発単発のポンポさんのセリフやジーンやアランやナタリーのシーンは心打たれる良いものがあるのですが、単発ゆえに俺の中では「ちょっと足りない・弱い」になってしまうんですよね。終盤にもっと畳み掛けて盛り上げて欲しかったという思いがあるんですよね。今作は別に「尺のため」に本来あるべき盛り上がり所が犠牲にされた、などとは思いませんが俺の感想としては「小ぢんまりとした・小綺麗な纏まり方」になっているなぁと感じられたのです)

 


キャラクター、物語構成、映像演出と総じて高水準ではありますが、「優」評価と評するにはちょっと盛り上がり足りない・弱い部分が感じられたので
作品の評価としては、「良」評価の作品となります。

 

以上