アニメ「望まぬ不死の冒険者」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「望まぬ不死の冒険者」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 

 

物語の第1話、主人公の不死者(アンデッド)設定を観て思ったのは、この作品・作者は「オーバーロード」の影響を受けてるなと感じましたね。
なんでか理由は分からんけども主人公が不死者(アンデッド)になるのですが、不死者(アンデッド)になったことで主人公は食事や睡眠が不要になっているのですよね。
見た目が変化しただけではなく特性(他には毒が無効になっていたりする)も不死者(アンデッド)のそれに変化しているということなのですよね。

この辺りの設定(不死者(アンデッド)特性の獲得)は、見た目だけが骸骨に変化している「骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中」(骸骨の主人公が食事も睡眠もとる)とは異なり「オーバーロード」の設定に寄っていると感じるのですよね。

 

 

この作品の作者は「オーバーロード」の不死者(アンデッド)設定に影響を受けていると感じるのですが、しかしその本質を理解していないとも感じたのですよね…。


これは「オーバーロードⅣ ~感想」でも語っていることですが、
オーバーロード」の主人公・モモンガが異世界転移/転送時にその精神がアンデッドの精神へと変異している設定はおそらく人間が人間の精神のままアンデッドになったら(飲まず食わず不眠不休不老不死になったら…100年、200年、千年、一万年生き続けることになったら)精神が耐えられないだろうという発想・気付きから作者・丸山くがねちゃんは主人公の精神性をアンデッド化させるという設定が作ったのだと考えています。
つい先日までは自分が「人間」であるという認識・記憶がありながら、飲まず食わず不眠不休でも平気となったら自分が「人間」ではないと否応なく思い知らさせる事になります。
「人間」は精神、心が弱い生物であるのでもし「人間」の精神のままアンデッドになったら(日を追うごとに、自分が「人間」ではないと思い知らされるごとに)心が疲弊していずれ精神が壊れるだろうことが予想されます。
それを回避するための「アンデッドへの精神性変異」なのですよね。

 

 

で、この「アンデッドへの精神性変異」には「アンデッドだから人の死や不幸に忌避感や嫌悪感がない」、「自分は人間と別の種族である」、「同種・同族であるという認識がなくなる、薄くなる(元人間という認識になる)ので人間の死に鈍感になる」みたいな設定も付いてくるはずなのですよね。
(実際「オーバーロード」では主人公・モモンガが人を殺すことに躊躇いがなくなっているのもコレ)

 

 


しかし、今作「望まぬ不死の冒険者」の主人公は人間に対する認識の変化(「自分は人間と別の種族である」、「同種・同族ではない」)が感じられないのですよね。
(作中で人間(ヒロイン)を襲うシーンがありましたが、あれは「人間に対する認識の変化」の表れではなく禁断症・発作状的なものでしたからね)

 

オーバーロード」の主人公・モモンガは人間の個体に対して個人的な好き嫌いはあれど基本的には人間に対して「同種・同族ではない」という認識で、言うなれば虫・昆虫みたいな認識(別に生きるため・食べるために必要な訳でもない、同種・同族でもない、生きようが死のうが構わないという認識)なのですよね。
(まぁ人間だった頃の記憶・経験があるから、人間に対しても恩や義理を受けたらそれに報いることもあるだろうけど基本的には喋る昆虫程度の認識でしょうね)

 

 


そんな感じで、今作「望まぬ不死の冒険者」の作者が本当に「オーバーロード」の不死者(アンデッド)設定に影響を受けていて、その本質を理解しているのならば、主人公の「人間に対する認識の変化」というものをしっかり描かないといけないのですが、それが出来てない…、、、だから本質を理解していないと感じたのですよね。

 

 


この作品は「なろう系」ではある様ですが、
多くの安物なろう系の様なポンポンポンポンテンポ良く主人公が無双して都合の良い様に物語が進んで行く感じではなくゆっくり丁寧に物語を展開させようとしているので好感が持てる感じなのですよね(直近で言えば「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。」と同系統かな)。

 

なので、アンデッドへの精神性の変異についてもう少し設定・構成を考えて描いて欲しかった…、と残念に思ったのですよ。

 

 

 

あとは、強さ設定イマイチ分からん、というのもあります。
主人公は終盤辺りでは銀級の強さらしいけど、モンスターとのバトルを見てたら銅級、銀級が相手にするモンスターのレベルで既に一般人が何十人いてもどうしようもないレベルに見えて、だとしたらもう金級とかミスリル級の冒険者はどんだけバケモンなんだよ、ミスリルとかは一人で国滅ぼせるレベルじゃないかと強さ設定がホントにしっかりできているのか疑問なのですよね。

 

 

 

他には、根本的な謎として、なぜ主人公だけ?アンデッドとして復活したのか?主人公だけでないのなら他にも同様にアンデッド化舌冒険者が居るのか?
(作中では出てきてないしそんな噂すら全くなかったけど)
主人公がたまたま偶然アンデッドとして復活できたのではないとしたら誰が何のために主人公をそんな風にしたのか、意味があるのかと疑問なのですよね。

 

なんかこの辺りの疑問・謎は綺麗にはまとまらない気がする。
もし謎が明かされたとしても大した理由、納得できる理由ではない気がする…。
この作品のゴールは何処なのだろうかね?出発点というか根本が謎だからどういう方向へ向かっていくのか行ってるのかなんも分からないのよね。
最後は主人公は人間っぽくなって終わりか人間に戻るのか。永遠に不死者として生きるとかはなさそう(上述した様にそれでは精神がアンデッド性でないため心が壊れるだろうからね)。

 

 

 

と、色々書きましたが、基本的には悪くいない作品で
作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。

 


以上