録り貯めしていたアニメ「陰の実力者になりたくて!」(以下、「陰実」)を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。
1クール、13話くらいで終わると思っていたら20話もありやがった作品。
一気観したと書きましたが正確には1クール分を視聴してからは毎週1話1話消化していました(改編期近くになると作品が終わるのを見越して録り貯めていた作品の一気観を始めるのですが終わらないでやんの)。
この作品のやりたい事は分かります。「オーバーロード」の『さすがアインズ様』をやりたいんだろうね…。
主人公と部下達の関係に焦点を当てればこの作品は「オーバーロード」のアインズ(至高の御方のまとめ役・ギルドマスターであったモモンガ)とナザリックNPC達の関係と同じですね。
主人公が何か適当な事を言っても「何か深い考えがあるに違いない!」と勝手に勘違いされ、主人公の起こした行動についても「まさかここまで先を見越して…」とイイ感じに話が転がったり…、と『さすアイ』現象と同じ事が起こりお話が展開して行きます。
しかし、この作品『さすアイ』現象については同じと言えますが「オーバーロード」とは似て非なる物…、「オーバーロード」とは比ぶべくもない駄s…作品ですよ。
この「陰実」、作画・アニメーションの質は高いんですよね…、戦闘シーンの描写なんか観てても、力入ってんなぁと感じられkadokawaはこの作品に期待してんだろうなと感じられます。
「オーバーロード」の終了が確定しているkadokawaとしては「オーバーロード」の『次』を作りたいと考えていてこの「陰実」をその座に据えたいという思いなのかもしれませんが、先ほども述べた様にこの作品は「オーバーロード」とは似て非なる物…「陰実」に「オーバーロード」の代わりは無理ですよ。kadokawaさんよぉ、注力する作品の見極め誤ってるよ?
そもそも「オーバーロード」の魅力って『さすアイ』の面白さ・可笑しさではないんですよね(魅力・面白さの一部である事は間違いありませんが)。
「オーバーロード関連の感想」で何度も述べている様に「オーバーロード」の魅力/面白さの本質ってその「設定の緻密さ」なんですよね。
世界観や魔法やアイテム、強さ設定、キャラクター設定の緻密さがあってそこに構築される物語が面白い「オーバーロード」の魅力なんですよね。
しかし、この「陰実」にはそんな設定の緻密さなんていうものが全く無い…、「オーバーロード」の『さすアイ』の表面・上澄みだけ掬った様な薄い設定、浅い物語となっているのですよ。
まず一番ダメだと感じる部分はやはり「強さ設定」かな。。。
主人公がなぜあんなデタラメみたいな強さ・最強の存在になり得ているのか、そこに納得がないのですよね。
主人公だけが持つ特異な資質、唯一無二の天賦の才・能力を持っているのならばまだ分かりますが、おそらくそういう特別な力はなく努力・研鑽のみで最強になったみたいなんですよね。
主人公だけが持つ特別な才能というものはなく努力・研鑽のみで最強になれるのだったらその世界の人間がもし主人公と同じだけの努力・研鑽、修業をすれば同じ最強になれるって事ですよね?
同じ方法で育成すれば誰でも「最強」に成れるという事に納得がないのですよ。
(さらに言えば、前世・転生前の普通の人間だった主人公の強さについて…おそらく主人公の性格から考えて前世・転生前でも転生後と同じ様な努力をしていたと思われますが、という事は前世・転生前の主人公は人類最強の存在になっていたのかね?まぁ第1話を観る限りは肉体的にも精神的にもとても人類最強になっていたとは思えませんがね…。
あとついでに第1話の感想・主人公のキャラについても少し述べると、悪漢相手とは言えその仕打ちに中二病という設定を超えただのサイコパスが描かれていましたよ。
あれは中二病とは言わない、ただのヤバい人・精神異常者ですよ…作者はヤバい異常者を描きたかった、という認識で良いのかな?、、、まぁろくに主人公のキャラも造れていないって事ですよ)
いやね、特別な能力を持って転生したとか転生先の現地人とは比較にならない強さを持って転生したとかの「なろう系」の最強系主人公モノの方がまだその「最強」に納得があると感じる訳なのですよ。
あと主人公の使う「アイ・アム・アトミック」もよう分からん。なぜあんな事になるのか、なぜあんな事が出来るのか…またそこに対して仮に納得できたとしても主人公って別に魔力が特別強大だとかいう事はないのよね?(特別な資質や才能・能力はないという認識)、、、という事は努力次第で主人公以外の誰もが「アイ・アム・アトミック」を使う事もできるって事になるのよね?
努力次第で誰もが「最強」になれるって事におかしいと考えんのかね作者は(「最強」の定義が訳分らんくなりますね)。
最強系主人公モノの「ユニークスキル」や「高レベル引継ぎ」みたいな設定は主人公の「最強」を担保するものになるのですがこの「陰実」にはその「納得」がないですよね、それが問題。
で続いての問題は、物語の展開というかこれも敵の「強さ」の見せ方の問題。
主人公が戦う事となるその敵の強さを示すのに「英雄の~」とか「伝説の~」とか評されているのですが、それが全く機能していないというか納得がないのですよね。最強主人公が「英雄・伝説」級の相手を圧倒するから英雄級、伝説級の強さに納得がない、薄っぺらい言葉だけの強さ設定になっているのですよね。
なんか特別な能力がある故に英雄や伝説といわれている訳ではなくどの敵もただ物理でゴリゴリ押してくるだけ、そして前述した様に「強さに納得のない「最強」主人公」がゴリゴリ物理で返すだけ…、納得のない・面白味のないバトルが無駄に力の入った作画・アニメーションで描かれるという残念さなのです。
主人公サイドだけでなく敵サイドの強さ設定、強さの見せ方も出来ていない残念さの問題。。。
あとは単純に教団関係のストーリーが面白くないね。
誘拐から始まり学園立てこもり、王国での暗躍など教団のやろうとしている事がちまちま小っちゃいのか大事なのか、何がしたいのかよう分からんのよね。
教団上層部を早々に出して何を目的としてその目的に近づくために行動していると明示すれば良いのに…ただ主人公が訪れた先で教団が関わっていて済し崩し的に敵を倒すというのを見せられるだけの繰り返しでは単調で飽きてしまう構成なのよね。
またこれは教団関連と関係ないのですが終盤の武術大会の展開が退屈でつまらんかったのよね。大会出場者は主人公(最強)とその他モブであり、
最強主人公の勝ちが明らかなのにこの退屈でつまらない武術大会話を4話も5話も引っ張りやがってと辟易しました。
せめて最強主人公以外に主人公サイドの仲間を参加させ、それに抗し得る強敵を登場させて最強主人公以外のバトル展開を盛り上げるとか、物理以外で勝敗が決まるルールを設定するとかお話を盛り上げる工夫があれば良いのですが、ただただ無駄に長いだけのツマラナイお話・展開で残念でしたね。
あと、どうでも良い事ですが、作中の登場人物のネーミングが雑だね、、、なんかそこからもキャラ設定を緻密に描く気がない、お話をしっかり構成する気がないのが見て取れますね。
なんか配信・再生回数の評価は高い作品のようですが、
俺の中ではあまり乗れなかった・ハマれなかったので作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。
以上
以下雑感。
全20話という変則構成だった訳ですが、その変速の意味が分からん。
メチャクチャキリの良い所で終わってるという訳でもないし(例えば「教団との大きな戦いが一つ終わる」とか「教団上層部と主人公サイドの顔見世がある」とか「今まで主人公の妄想と思っていただけの教団の存在を主人公が実在する敵と認識する(主人公の認識が大きく変わる)」とか…大きな変化が訪れる・キリの良い所までやったというのなら理解できるのですが、最後まで観てもなぜ20話構成だったのか謎な変則構成の作品でした。
あと教団の設定について。
物語の設定上巨大な悪の組織とされている教団ですが、自分が妄想していたのは「教団側も」組織が形成された経緯が「主人公側と同じ」であるという妄想。
「教団側」にも主人公と同じ様な思考の持ち主で悪のフィクサーに憧れる人物がいて、あとは主人公サイドと同様に周りが勝手に勘違いして教団が巨大化して行った、という設定を妄想していました。しかし、物語を観ていると歴史の古さだったりあまりにも非道な事をやってたりと勘違いではすまない・部下が勝手にやっちゃいましたではすまないレベルに感じられこの妄想は諦めましたけどね….。
他に主人公アホすぎ問題。
「オーバーロード」のモモンガは特別賢い・頭が良い訳ではないのですが、だからと言って馬鹿ではないのですよね。普通に論理的思考ができる当たり前の/普通の頭を持っています。しかしこの「陰実」の主人公は論理的思考が出来ないアホなんですよね。いや、普通に考えたらわかるだろ…という事が分からない普通の頭・思考能力がないアホな描き方なんですよ…まぁ作者がろくに主人公キャラも作れていないからアホに仕上がってしまっているんですけどね。
あと主人公のキャラ問題ついでに述べておくと、異性に対する主人公の態度に納得がない…。性欲が枯れ果てた老人や仙人でもあるまいし達観しすぎだろ…、若い男だし(前世でも若くして死んでるし)本能で反応する部分もあるだろ、と納得がないのですよ。。。
まぁもしかしたら主人公を最強たらしめている超人的なその能力は、性欲・リビドーを全て捧げる事によって得られた力かもしれないね…
(冗談ですよ、性欲捧げて世界最強になれる世界ってなんだよそれ…)
、、、以上雑感でした