アニメ「明日ちゃんのセーラー服」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「明日ちゃんのセーラー服」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。


第1話を観た当初、これジャンルは日常系?萌え作品か?と考えていたのですが、
観進めて行くとどうにも日常系とも萌え作品とも違うよなと感じ、とするとこの作品のジャンルはなんだ?と第10話まで悩みながら観ていました。

 

日常系の萌え作品といえば普通は決まった(特定の・定まった)4~5人くらいの女子グループを中心にしたほのぼのした萌へぇ~な物語が展開する作品となるのですが、
この作品は主人公を中心とした特定のグループというものが出来なくて毎話毎話主人公と仲良くなるクスメイトが入れ替わるんですよね。
そういった意味から、そしてまた作画、演出、作品の雰囲気からも日常系萌え系作品とは言えない感じなのですよね。

 

WIKIを見てみるとこの作品のジャンルは青春学園物と書いてあるのですが…、特に何か大きな出来事・事件があって学園での物語・関係性が進展する訳ではないので青春学園物というジャンル定義に「???」と感じるところもあったのですが、
最終盤の11話12話を観終えた後は、しっかりと青春学園物としてシリーズ構成された作品であったなと納得したのでした。

 

最終盤の展開は1クールのシリーズ物として綺麗に纏めてあるのですが、最終盤以外のお話は基本的には上述した様に特に何か大きな出来事・事件があって物語が展開するお話ではなく、ただちょっとしたきっかけで毎話毎話違うクラスメイトと少しずつ仲良くなる話が描かれているだけなのでお話としてはちょっと弱いのですよね…。
しかし、お話自体は弱いのですがこの作品にはそのお話の弱さを補って余りある作画・カット、演出の妙があるのですよ。


画の力だけで話を魅せる凄味があるんですよね…、ホントたまに良いアニメーション作品を観たときにあぁ今本物のアニメーションを観ているな、これがアニメの真骨頂だなと感じる事があるのですが、
この作品は久々に本物のアニメーションだなと感じましたよ。
(誤解がない様に捕捉しておきますが、「作画・カット、演出」が良ければ「お話」がどうでも良いという事ではなく、「作画・カット、演出」も素晴らしくその上で「お話」(物語展開・構成、キャラクター、設定)も素晴らしいのがもちろん一番良いです、、、それは例えば「ボールルームへようこそ」の様な…ね)

 

別の作品の感想でもちょくちょく語っている事なのですが、自分が作品を評価する際重きを置いているのは、(納得のある)物語展開・構成・設定であり、作画は二の次三の次としているのですよ。
自分の中ではただヌルヌル動くだけ・作画枚数が多いだけの作画では「良」評価にはなり得ないのですが(モーションキャプチャー使ってる某バレエアニメ作品なんかは大した評価にならない)、
この作品はただ良く動くだけの作画ではない…、魅せたい画・印象に残したい画というものが強く伝わってくる良い構図・カットでまた演出の妙があるんですよ。。。CloverWorks良い仕事するなぁ…。

 

画の力(作画・構図、演出)は間違いなく最高峰でアニメーションとしては素晴らしいのですが、やはりお話が弱いのですよね…10話以前は特に(11話12話含めお話としては若干弱いのですが…決して悪くはない、マイナス評価になる様なお話ではなかった事を補足しておきます)。

いや、何が言いたいのかというと、お話が弱いゆえにこの作品の正しい見方としてはお話・物語自体には重きを置いていない…作画・構図、演出の「アニメーション」自体に重きを置いている、、、それは小説で言えば純文学の様な見方をするのがこの作品の正しい楽しみ方なのかなと考えていたのですよ、10話までは。

それが11話12話で1クールのシリーズ物として綺麗に纏めに来たので、あぁ必ずしもそういう見方(作画・構図、演出のみ、アニメーション自体を楽しむもの)ではなかったのだな、と認識を改めたというお話です。いや、別にどちらの見方でも良かった(納得は出来た)と思うのですが…、物語構成に重きを置く自分としては1クールのシリーズ物として纏めに来た展開の方が好みではありましたね。

 


原作は漫画らしいのですが、おそらくCloverWorksが漫画原作を最巧の形でアニメにしたのではないでしょうかね。

(「明日ちゃんのセーラー服」は2022年冬アニメの中でも話題になった作品でその名を轟かせたと思うのですが、それはCloverWorksがアニメの真骨頂を見せたからに他なりません。
「明日ちゃんのセーラー服」は内容的には実写化も可能な作品ですが、もしこの作品を実写化したら必ずコケるでしょうね。。。それだけCloverWorksの力、アニメーションの力によるところが大きいと考えますね)

 

 

お話、というかキャラクター設定、作品全体の雰囲気についても少し語っておくと…、
主人公・明日ちゃんの天真爛漫な性格が良いのは勿論の事、
クラスメイトも良い娘ばかりな設定なのが良い、というか作品として正解ですよね。
変にリアルを入れようとすると妬み嫉みを含んだドロドロギスギスした学園物になりそうですが、この作品はそういったものを敢えて排除しているのが良いですね…。


別に俺は、アニメ・フィクション・創作物に必ずしもリアルが必要とか必須とか考えていないですからね。
場合によっては極力排除する、最初からない物とする、でも全然良いと考えますよ。
この作品では主人公・明日ちゃんが絶望する、深い悲しみに沈む様な展開は不要・必要ない・あるべきではない~その方が作品として綺麗に成立する、エンタメになり得る~と考えるので、アニメをエンタメ作品である理解しフィクション・創作物として認識しているのであれば、そこにリアルがなくとも・非現実であろうとも・ファンタジーであろうとも全く良い、
その考え・設定は正解だと思うのですよ。。。その作者の「判断」にも納得があるというお話。

 


自分の中で通常では作画が綺麗なだけの作品というのは「良」評価に値しないとする判断があるのですが、この作品は美麗作画というのに留まらない構図・カット、演出の妙があり、またそれに加えお話自体も全くマイナスになる要素がなくキャラクター設定、作品全体の雰囲気も素晴らしかったので
作品の評価としては、「良」となります。


以上