アニメ「推しの子」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「推しの子」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 


2023年春アニメの覇権との呼び声高い今作で期待して観たのですが…、
別に悪くはない・面白いは面白かったのですが、覇権とかそこまでの作品かな?というのが正直な感想の作品でした。

 

「普通」に面白かったのですが、その面白さはお話の展開・構成というよりかはキャラの造り・魅せ方の巧さですかね。


このキャラ造り・魅せ方の巧さはさすが「かぐや様~」の作者かなと感じますよ。

 

キャラ造り・魅せ方は良いと思ったのですが、自分の中でイマイチ盛り上がらなかった理由が幾つかあるのですよね。

 

 

まず一つ目が、1クール作品としての締めの弱さ。
この作品の本筋って、父親捜し、復讐のミステリー・サスペンスだと思って観ているのですが、1クールの締め・最終回の見せ場がアイドルステージ回、ヒロインの見せ場で終わるという構成がちょっとねぇ、と感じたのよ。
いやね、最後に父親の情報というか手掛かりが示されて次の章に繋がるという感じで終わるのですが、父親捜し・復讐忘れてませんよ的な取ってつけた様な申し訳程度のシーンなのですよね(最終話の見せ場のシーンにはなっていない)。

 

この作品がホントに父親捜し・復讐をメインに据えているのならある程度その核心に迫ってから終わらないと…例えば父親の名前の一部でも判明するとかさぁ。。。
1クール終わってほとんど何も分かってないじゃん・父親捜しは何も進んでないじゃんで終わるっていう構成がダメだなぁと感じるのよ。
もしこのアニメ作品が2クールだったとして、2クールあれば父親捜しがある程度進展したのかどうかは原作未読なので分かりませんが、アイドルサイド・ヒロインサイド(妹じゃない方のヒロイン)がメインの見せ場で終わる事はなかったんじゃないのかな、知らんけど。

 

 

 

で、自分がこの作品にイマイチ盛り上がられなかった理由の二つ目がアニメ視聴前からのイメージの悪さ。
このイメージの悪さというのは例の炎上騒ぎではありません、別の理由です。

 

前段で原作未読と書きましたが、実は原作漫画1巻だけは読んだ事あるのですよね。
もう結構前…2年ほど前でしょうか、ジャンプで連載していた某演劇漫画が打ち切り終了となりそのロスを埋めるための漫画を色々と探していたのですよね。

 

そんな中でTLに「(某演劇漫画が好きなら)『推しの子』絶対ハマるはず」みたいなのが流れてきて、そのタイミングでちょうど原作漫画1巻(電子書籍)が無料で読める機会あったので期待して読んでみたのですよ…。

 

そうして読んだ結果が…、、、おい!これ演劇物じゃないじゃねえか!
この漫画作品は「復讐、ミステリー・サスペンス」がメインだろうが!しかも転生・生まれ変わりとかオカルト入ってるし…。
某演劇漫画の代わりを求めていたのに…誰だよ「推しの子」が演劇漫画であるようなTL流したのは!作品のジャンルすらも分からんのか!と腹立ったもんね(2巻以降読む気が起きんかった)。
…そんなこんなでどうしてもやはり、演劇物だと思っていたけどミステリー・サスペンス物だったという騙された感・怒りの「マイナスイメージ」からアニメに入る事になってしまったのですよね。。。

 

まぁ1巻だけ読んで以降の話は知らんかったから2話以降(1話が90分…3話分なので実質4話以降)はまぁ普通に楽しめたのですがね(それでも前段で語った様な構成の悪さは目立つのですがね)。

 

 

 

で、次の理由がこのアニメ作品を語る上で避けて通れない例の炎上問題。
アニメ放送中(炎上騒ぎ中)はアニメ本編自体は観てはいなかったのですが、TLでどんな内容なのかはある程度認識・想像しておりました。

 

 

この件について俺の見解を述べるなら、恋愛リアリティショーを題材に選んだ事はNGかなと考えます。

 

なにがダメ・いけないかというとやはり実際に人が亡くなっている(どうしてもあの事件を想起させてしまう)という点、
そしてこの作品(漫画・アニメ「推しの子」)がエンタメ作品であるからという点です。

 

エンタメは娯楽であり商売なんですよね。商売…お金儲けのために「人の死」を利用している、そう感じられる事がNGなのですよね。

これは別に、実際の事件・事故などをモチーフにした作品を創る事自体がNGと言っているのではありません。

もし、この作品のテーマが最初からネットリテラシー的な事を主題に構成している作品だったのなら「恋愛リアリティショー」を題材に選ぶ事に俺は全然OKだと考えますよ。
(例えばそれは数年前に放送された菅田将暉主演のドラマ「3年A組 今から皆さんは、人質です」の様な道徳・啓蒙的な造りの作品)

 

しかし、実際はこの作品は転生・生まれ変わりの設定(オカルト・ファンタジー)があり、メインストーリーは復讐のミステリー・サスペンスであるというエンタメ作品となっています。
「推しの子」の恋愛リアリティショーは黒川あかねというキャラを魅せるためのお話・構成・舞台装置として使われているだけ~今後の作品をエンタメとして「面白くする」ため、「人気を得る」ため、「商売として」、「お金を得る」ため~に【人の死】を使っている・利用しているという事がNGなのですよね。
(まぁこの辺りは俺が感動ポルノ作品(「王様ランキング」や「聲の形」など)が嫌いな理由にも繋がります…「エンタメ」のために障碍者が存在しているのではない!)

 


一応、この件を書くに当たってまとめサイトみたいなのを見たのですが、「事件後」にこのお話(恋愛リアリティショー編)は描かれているみたいなのですよね。
作者は「事件とは関係なく元々恋愛リアリティショーを扱うつもり・構成だった」と語っていた様ですが、事件前ならともかく事件後であるのならば上述した理由(「推しの子」がエンタメ作品である)から構成を見直すべきだったと俺は考えますね。

 

 

ただそこで俺が疑問なのはなぜ二重三重(四重五重)のチェックが働かなかったのかという点。
原作者がお話の流れ・構成を考えてまず担当編集にネームを見せる、説明すると思うのですがその時点でチェックが働いていない事(直近で事件が起きていた事は担当編集は認識しているはずなのに)、
そして作画担当にも当然お話の流れ、構成が説明されると思うのですが、そこでも「これ大丈夫ですかね?」みたいなチェックが働いていない事(そんな事言える立場ではないのかもですが…)が疑問なのですよね。
(その後、担当編集を超えて編集部内にはさすがに今後のお話の流れ・構成までは説明される事はないかな?)

また、恋愛リアリティショー編掲載当時のファンの反応で「これ大丈夫?」みたいな反応はなかったのかね?あればそこで何か手を打つ事もできたはずだけど…。
更にアニメ化に際して、監督、脚本・シリーズ構成、プロデューサー辺りから「この話、大丈夫ですかね?」みたいな心配は誰もしなかったのかね?と疑問なのですよね。

 

アニメ化まで来たらさすがに恋愛リアリティショー編を削るみたいな事はできないと思いますが、遺族の方に一報入れるくらいの配慮・根回しがあっても良かったのでは、と疑問なのですよね…、まぁしかし俺のところにもしそんな一報が来たら上述した理由(「推しの子」がエンタメ作品である)からNGを出しますけどね…。

 

だからこそ早い段階(担当チェック辺り)で構成の見直しを図るべきだったと考えるのですよね…絶対に「恋愛リアリティショー」でなければいけない・黒川あかねのキャラを魅せれない訳ではないと思うのですよね…。。。
なんかその辺りの気の回らなさ、危機管理・察知・回避能力の低さがちょっと残念ですね。

 

 

以上が俺がイマイチ盛り上がられなかった主な理由となりますね。

 

 

 

あとはどうでも良い細かいところで気になる点が。

主人公の双子の妹の方の転生・生まれ変わりはともかく、兄(主人公)の生まれ変わりは意味分からん。
いや、主人公が生きているとき(生前時)、既にお腹の中に双子が居たのよね?どうしてそこに生まれ変われるのか分からん、納得がない。

 

あと、主人公は産婦人科医なの?いやね、なんかじいさんかばあさん相手に診察してたみたいだったからね…まさか産婦人科の患者ではないよね?

 

そして、生まれ変わりの双子(兄妹)の前世の家族について。
ある程度大きくなったら自分の前の家族とかどうなっているのか調べようと思わんのかね?なにも言及がないからそれが謎というか納得がない。
兄(主人公)の方はばあさんと一緒に写った写真が出てたけど…もしかしたらその祖母はもう居ないのかも、だけど。

 

 

色々と気になる点はあるのですが、「普通」に楽しめましたよ…覇権は言い過ぎだと思いますがね。
作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。

 


以上