小説「デルタの羊」 ~感想

小説「デルタの羊」を読了しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。


「アニメ好きなら読んだ方が良い」、「SHIROBAKOみたいな話」と聞いていたのでいつかは読んでみたいと発売当初から気にしてはいたのですが、つい最近読了しました。

 

ネタバレなしで感想を語ろうかとも思ったのですが、それではさすがに語る事が難しいのでボヤァっと輪郭程度を語る感想にしようと思います。

 

SHIROBAKOみたいな話」と聞いていたのですが、まぁ…違いますね。いや、「アニメを作る話」という意味では同じ枠、同じタイプの作品と言えなくないですが、
この【デルタの羊】は【SHIROBAKO】ほどにお話の構成やキャラクターは出来ていないのですよ。

【デルタの羊】を「【SHIROBAKO】と同じ様な作品」と語る事は暴論であり、
同じ「アニメ制作の話」というジャンル以上には並べて語るものはなく、それは例えば不朽の名作【ガラスの仮面】と昨今連載されている演劇漫画を「同じ様な作品」と語る事に等しく、
同じ「演劇物」というジャンル以外には並べて語る様な共通項などないのに「同じ様な」と同列扱いする感想に違和感を覚えるのです。

 

そりゃあ、同じ「アニメ制作」物で、制作進行や原画、動画、背景美術や音響、プロデューサー等々は出てくるので、ジャンルだけを見て作品の面白さの本質を分かってないと~まぁ…当著の参考文献・資料に【SHIROBAKO】があるので、著者が【SHIROBAKO】を参考にしたであろう場面を読むと~「同じ様な作品」という感想になっちゃうのかもね。。。
(【SHIROBAKO】の面白さの本質はその物語構成の秀逸さなのよ!あとは魅力的なキャラクター達も。…本題から逸れるのでここら辺で終わりにしときます…)

 


SHIROBAKO】と比べると【デルタの羊】は面白味が足りないと書きましたが、良い所・一部面白かった部分もあります。
それは、最初の1章2章3章までの「仕掛け」の部分です。
ネタバレしない範囲でボヤァっと輪郭程度で語ると、
1章を読んで「あ~こいつが主人公か」と思ったら2章で「え?そういう事?」3章で「あ~なるほどね」と唸らされる仕掛けが面白かったですね。
まぁ、その「仕掛け」以外の部分では先にも述べた様に、お話の構成、登場キャラクターに面白味を感じる事がなかった訳なのですわ。。。
お話の構成自体は悪くはない、決してマイナス評価にはならないのですが、取り立てて良くもないというのが正直な感想なのです。

 

あとは、ちょこちょこ気になる部分がありますね。

 

まず一つが、登場するアニヲタ二人の会話について…。いや、俺もアニヲタだけどさぁ、あんなアニヲタスラングオンリーみたいな感じで会話する奴おらんやろ…。
単発単発で使う事はあってもアニメネタオンリーで会話のキャッチボールする様な遣り取りせんやろ…、不自然で気持ち悪いわと感じるのですよね。著者のアニヲタへの偏見からくるのだろうかね(これと同じ事を「ヲタクに恋は難しい」でも感じたな、と書いていて思い出しました)。

 

次に、物語の中枢ともいえる作中作「アルカディアの翼」について。
小説の冒頭にこの「アルカディアの翼」が描かれているのですが、
これがね、今の時代にこの内容の作品をアニメ化しても絶対売れないだろう…作品から感じる雰囲気がひたすら重く暗い感じで絶対にアニメというエンタメに向いてない…、と感じるのですよ。
作中の登場人物達は漏れなくこの「アルカディアの翼」のファンみたいなんだけど、とてもとてもそんなにハマるほどの作品には感じられないのです。ここに「納得」がない。。。

また、この「アルカディアの翼」のアニメ化に中国が関係しているのですが…、
アルカディアの翼」って「反体制」の作品なのよね。「反体制・反権力」って中国政府が一番嫌う物であり、そんなもん絶対許可される訳ないじゃん…とここにも「納得」がないのです。


と、物語の中枢たる作中作「アルカディアの翼」の設定について、納得がない部分が評価を下げてるのも多少ありますね。

 

作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。


…この作品を映像化するなら実写ドラマよりアニメ化の方が向いてますかね(仕掛け的な意味で)。


以上