アニメ「外科医エリーゼ」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「外科医エリーゼ」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 


タイトルからは想像できなかったけどこの作品って悪役令嬢モノなのね。
まぁ正確には悪役令嬢モノの亜種と言った方が良いのか。
主人公はゲーム世界の中に転生する訳でもないし、間に現代への転生を挟む点も通常の悪役令嬢ものとは異なりますね。
しかし、基本的には一度目の人生で失敗した/火あぶり処刑された人生を経験しているのでそれを回避するため(というとちょっと違う・正確ではないのですが)のお話となるので悪役令嬢モノの範疇であることは間違いないのですよね。

 


タイトルからも分かる様にこの作品って外科医である主人公の物語であり、それを描くためには当然医者としての知識、外科手術の知識が必要になるのですが…、凄いな作者は…、医療知識があるのかな?よほど医療知識に自信があるのかな?専門知識を学んでいたりだとか現場で現在進行形で知識・技能を得たりとかでないと自信もって作品として描けないよ、普通。
もし「ER」なんかの医療ドラマが好きで全話観てる、としてもそのレベルでは医療を軸とした作品を描こう/描けるとは到底考えないよね(俺だったら考えない、無理)。
そういう意味でこのジャンルの作品を描こうと思った作者のその自信(間違ったことは描けないし…古い情報そのままにしておけない・更新しないといけないし、専門家・医療関係者から突っ込まれるし…)が素直に凄いと思ったね。

 

 


あと、この作品は一応悪役令嬢モノのフォーマットではあるのですが…(これは最近の悪役令嬢モノによくある傾向なのですが)、主人公はそんなに「悪役」(令嬢)ではないのですよね。
一度の火あぶりにされた人生においても、主人公はそこまで・処刑されるほどの「悪役」ではないのですよね。いやね、「愚かな」令嬢ではあったかもしれませんが、「処刑されて当然の様な悪役」令嬢とは思えないのですよね。

 

さらに「悪役令嬢」の転生の見せ方が下手という問題。前世(一度目の人生)での悪役感が薄いし弱いし、また現代への転生した(二度目の人生)ときの主人公の心境の変化も描かずいきなり三度目の人生から物語が始まるので主人公のキャラクターというものがいまいち分からない感じになってしまっているのですよね。
主人公キャラの魅せ方/構成が下手であるため、「二度目(三度目)の主人公(のキャラ)」しか分からない視聴者からすると「一度目の人生で火あぶり処刑された主人公(のキャラ)」はそんなに悪い奴だったの?処刑されて当然の様な悪だったの?今の主人公(のキャラ)からはとてもそうは感じられないと、納得のないものになってしまっているのですよね。

 

 


また皇子のキャラにしても、一度目の人生のときは主人公をあっさり見捨てて火刑に処してるのよね。(この火刑にしても、王妃だけ処罰する王ってどうよ?おかしいだろ、ヤバいだろ。いや、普通は国を乱したというのなら王が処刑されてその後(または同時)に王妃も処刑だろ…。王妃だけ処刑して/王妃に責任押し付けたみたいにしてめでたしめでたしの王って有り得んだろ、その国ヤバいだろ、と納得がない)
(前世の世界線で主人公をあっさりと切り捨てる)そんなことをする皇子とのラブロマンスを描かれてもなんだかなぁという感じ。
ホントキャラの魅せ方、構成が下手で残念。

 

 


で、皇子のキャラついでに、変身能力について。
この設定要らんだろ。こんな魔法みたいな不可思議な能力を入れたら/認めたら医療を軸とした作品の根底がブレるだろ…。
こんな魔法みたいな能力がある世界観設定ならば治癒魔法みたいなのもあるんじゃないの?在ってもおかしくない。そんなこと(治癒魔法/アイテムが存在する)になったら医療の意味がなくなるよ、と。
だから魔法みたいな設定は入れるべきではないと思ったのですよね。

 

 


で更に言うなら、世界観設定。
この作品の世界ってえらく外科医療が発展してるのよね。「現代」の医療知識を持っている主人公が、「現代」において手術するのとなんら変わらない様に「異世界」でも同じ手術が出来ているのですよね。
よっぽど「現代」と変わらないくらい同じレベルで「異世界」の外科医療が進んでいるということなの?有り得んと思うけど…。
いや、普通はね「現代」の方がはるかに医療技術は進んでいて「異世界」には存在すらしない医療器具なんかが山ほどあると考えるのですよね。なので主人公はそういう道具を作る(依頼して作る)ことから始めないと、と思う訳なのですが、そんなことを行う必要は全く発生せず当たり前のように手術が出来ているのですよね。
「現代」の医療知識・技術で手術を行っていた主人公が変わらず同じレベルで手術できる「異世界」の医療技術ってどんな世界観だよ、と納得がないのですよね。

 

 

 

ここまではキャラや世界観設定について述べてきましたが、以降はお話の内容について。

俺が一番問題だと考えるのは最終盤(11、12話)のお話。
これまでのお話は医療を軸にドラマが展開されてきたのですが、11話終盤と12話では暗殺や暴力/武がいきなり出てくるのです。
俺はこの展開にビックリというか呆れたね。これまでの積み重ねをぶち壊す様なアホな脚本でしたね…これ原作もこうなの?アニメオリジナル展開なの?なんか最終盤としての盛り上がりを作るためだけのダメなアニオリ展開な気がする…。


暴漢/悪漢/刺客に襲われる主人公ですがすんでのところで救われます。その際、暴漢は剣で切られたり貫かれたりしているのですが、医者である主人公の目の前で命が奪われるような行為が行われているのに主人公はその暴漢達をそのまま(治療などせず)に立ち去るのですよね。
いや、これまで描かれてきた主人公のキャラとしては、たとえ自分を狙ってきた刺客相手だとしても命を救おうとする様に動いたのではないかと、疑問に感じるのですよね。
(いやね、せめて傷つき倒れた暴漢たちを診て、もう死亡している手遅れだみたいなトリアージシーンを入れて納得を作って欲しかったの感じるのよね)

ホントこの最終話の暗殺、暴力展開はアホだと思ったね(たとえ原作通りだとしても納得を作るために脚本側で修正すべきなのです。しっかり原作を読んで主人公のキャラを理解した上で納得のある展開・お話を作る能力のある脚本家なら直せるはず…。赤尾でこ脚本は基本的に原作に忠実/原作通りで良くも悪くも「無難」にまとめているだけ、という感じられるイメージなのよね(…あと全然別件ですが赤尾でこってあの三重野瞳だったのか)。もし脚本/シリーズ構成が渡航だったら納得を作っていたかもなぁ、と感じる)

 

 


あと、本編の内容とは全く関係ないのですがこの作品のOP曲…なんか90年代後半~'00年代始めの様な懐かしさを感じる曲でしたね。そんな風に感じた、ただそれだけです。

 

 


作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。

 


以上