アニメ「解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 


色々と考えが足りないなと感じた作品。
所謂、追放系。
以前別の追放系作品の感想でも書いた事だけど、能力・実力はあるのに何故か追放される主人公という、納得のない所から始まるのよね。
まぁそこはもう追放系のテンプレだからツッコむのも野暮というものかもしれませんが…、
いやね、「大した(納得できる)理由なく何故か」「理不尽」に追放させる意味がないと思う訳ですよ。。。例えば、取り返しのつかない失敗を犯した…、しかしそれは実は部下の失敗を庇っての物だったとか、なにか誤解/行き違いがあって解雇された、誰かが責任を取らなくてはいけなかった…、そこへ以前から主人公の事をいけ好かなく思っていた敵役がこれ幸いと追放した…という様な追放に納得を作ってくれればそれで良いのに、なぜ理不尽に/納得なく追放させるのだろうね(本当に実力がある/有能である主人公ならば誰か引き留める様な展開があっても良いはずなのにそれもない…まぁ四天王の中で一人主人公の有能さを理解してそうなのが居たけど)。
もう少し納得をもってお話を作ろうや。。。

 


で、今作「解雇された暗黒兵士~」の考えが足りない点。
元々魔王軍側に居た主人公が解雇された事でなんやかんやあって(自分が人間だったと分かって)人間側に付く事になるんだけど…、この構成・展開がまず分らん、なぜこんな構成・展開にするのか?


魔王軍時代、主人公は人望があって部下や一部同僚たちからも慕われていたんだよね?それが魔王軍と敵対する人間側に平気で付かせるその構成・展開が意味分らんのよ。
魔王軍と人間側って殺し合いしてんのよね?それなのに解雇されたからって親しくしていた部下や同僚の居る魔王軍と敵対する勢力側(殺し合う相手となる側)に付く意味が分からんのよ…いやね、これがもし恨み・憎しみを以って魔王軍を辞めた・解雇されたというのなら敵対勢力に付く意味も分かりますが、恨み・憎しみの感情なんて持ってない状態なのに自分が人間だと分かったからって平気で人間側に付くサイコパス的な思考に納得がないのですよ。


いやまぁ最悪人間側に付くのは良いですよ…魔王軍vs人間側の戦いには(親しかった者達と戦うのは嫌だという考えから)関与しない様に生きる、と主人公が決めているとかなら人間側に付くのも良いというかまだ納得するのですよ。
しかしミスリル鉱山を(結果的に)魔王軍から奪ったりと明らかな敵対行為。まだ話の通じる奴が最初に来たから良かったものを問答無用で武力で奪い返そうとする奴が来てたら元部下や同僚たちとも血みどろとの殺し合いになっていたと思うのですが…。


主人公としては元部下や同僚たちと戦いたくないのに周りの状況がそれを許さず否応なしに戦いに巻き込まれる…人間側に付くというのはそういう事だと容易に想像がつくだろうになぜこんな構成・展開にするのか理解できんのです。


これまでの追放系作品は敵対勢力に付くというのはあまりなかったと思うのですよね(「勇者、辞めます」がありますがあれは本当の意味での敵対ではない・茶番だからね)。あくまで主人公は人間側に居て、人間側のある一部/(勇者)パーティーから追い出されるという形なのよね。
人間側のパーティーを追い出されたからといって魔王軍側/人間に敵対する側(人間相手に殺し合いをする側)につく構成・展開には普通しないでしょ…。
やるなら魔王軍側の分派に付く、もしくは魔王軍・人間側とも立場の異なる(中立的な立場の)既存の第三勢力に付く、なければ自分が第三勢力になる、とかすれば良いのに…その方が納得があるのにと考えるのですよね。


こんな訳の分からない構成・展開にしているから、物語終盤おかしな事を語るはめになってんのよね。
物語終盤に語られる魔王軍と人間側が争っているのは何故かみたいな話…、なんか昔っから人間側が一方的に魔王に喧嘩を売ってるって話だったけどなんだそりゃですよね…大して争う理由もなく争っていた、あまり戦う理由・意味はなかった、魔王軍vs人間という構図に大した意味はないという、主人公が魔王軍と対立する理由をなくすための無理やりな、最初から考えて物語を創っていたらこうはならなかったであろう、考えが足りない設定、、、なのですよ。

 


で、次に考えが足りないなと感じる展開は、
主人公を追い出した炎使いの四天王が最終盤に改心して終わる展開。
いやいやいや物語締めるために無理やり良い奴にならなくていいのよ。悪い奴・嫌な奴は悪いままでいいのよ。なんかイイ話っぽくするためだけに改心させなくていいのよ。。。

あの炎使いの四天王はさぁ別に誰かに操られてたとかではないんだよね…あのイカレっぷりは紛れもなくアイツ本人の本性な訳だよね。
またなにか誤解・勘違い・騙される・唆される様な事があれば再び同じ様にあのイカレっぷりを爆発させるって事だぜ…。誰かに操られていた訳でもない素の/元の/根本の性格は何ら変わっていないはずなのに改心したように・イイ話風に纏められても「は、はぁ…」という納得がない、考えが足りないと感じる展開・構成なのよね。

 


もう少し考えを巡らせて構成して欲しいなと感じる訳なのですよ。

 

あと、主人公の実父・先代勇者の魔王軍に対する恨みの話。

いや、息子が生きていたというのは良かったのだろうけど妻は魔王軍に殺されている訳で恨みは消えないでしょ…。部下が暴走してやっちゃいましたと言われてそれで許せるの?と主人公の実父と育ての親が仲良くやってるのはなんか納得がないよね…。そんな重い話・悲しい話に最初から構成しなきゃいいのに…とここも考えが足りない作者だなと感じる訳です。

 

 


…この「追放系」が人気あるのって色々と想像したらなんか悲しいんですよね。
「俺は本当は実力がある、もっと評価されるべき」と思ってる作者が自分を評価しない上司、同僚、後輩や会社、世間に「ざまぁ」したいという思いから産まれた作品だと思うんですよね。

 

今作「解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ」はタイトルに「30代」が入っているのですが、作中では別段意味がない言葉である事からおそらくこの作品の作者が「俺は本当は実力がある、もっと評価されるべき」と考えている30代であり、そんな自分(作者)を無条件好きになってくれる女性が現れて結婚して子供が産まれて幸せ~という願望から生まれた作品なのだろうな、、、と想像すると何だか悲哀を感じるのですよね。

 

自分の願望・妄想を作品にぶつけるのは構わない/良いと思うのですがエンタメである事を意識して納得を以って物語造って欲しいと、勝手に感じちゃいました。

 

作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。

 

 

以下雑感

まぁどうでも良い事ですがちょっと不満だったのが、魔王軍時代、主人公の事を理解していたと思われる女性四天王(あのアホっぽいのとは別のもう一人の清楚系?な感じの方)。結婚して子供もいる主人公の事を知った後の修羅場展開を期待してたんだけど何も絡んでこなくて残念だったよ…。

 

 

あと全然関係ないけど、主人公の実父の十傑集走りは良かった…、けど「長瀞さん~」といい、なんだ?十傑集流行ってるのか?

 

以上