アニメ「もののがたり」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「もののがたり」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 


物語の導入は少年漫画的(掲載は青年誌の様ね)な入り、ジャンプ系らしい感じで良さ気だったのですが大して盛り上がらず終わった作品でした。


また構成・設定・世界観等で納得のない部分が所々あるんですよね。

 

第2話で、主人公の発した言葉に対しヒロインがキレて、
事情も知らないのに勝手に決めつけるな!考えを押し付けんな!的な旨の発言と共に主人公に怒りをぶつける展開があるのですが…まずここに納得がない。

 

いやね、このシーンで描きたい事は分かります~ヒロインは一緒に暮らしている付喪神の事を主人公から危険だのバケモノだのと罵られて腹を立てるという、一緒に暮らしている付喪神の事を本当の家族の様に大切に思っている、だからこそ家族の事を悪く言われたから腹を立てた~そういうヒロインのキャラを描きたいがためのシーンだとは分かります。
しかし、このシーンを描きたい/ヒロインのキャラを描きたい、という事だけが目的になり過ぎているため納得がなくなってしまっているんですよね。

 


まず、こちら(視聴者)側としては第1話で主人公の過去話を観ているので主人公が付喪神に対し憎悪を抱く感情、そして第2話でのヒロインに対し発した言葉にも対しても納得があります。
しかし、ヒロインの怒りの感情からくる言動はこちら(視聴者)側が主人公に対し感じていた納得/共感を否定するのです…、そこにまずモヤっとする。。。上述したヒロインのキャラを描きたいが先行し過ぎて納得がなくなっている構成の下手さの問題。

 

そして、ヒロイン側にはヒロインの付喪神に対する想いがあるのは(第2話の時点でも)理解(想像)はでき、家族を悪し様に言われた事に怒りを覚える、そこまでは納得があります。
しかし、その怒りを露わにして相手にぶつけるのは違うのではないかと納得がないのですよね。


「事情も知らないで勝手に決めつけて」と怒るヒロインですが、それは相手側にも同じ様に怒る、付喪神に対する憎悪する理由があるとは考えないの?
「事情も知らないで勝手に決めつけて」と言いながら主人公が付喪神に対し憎悪する事情を想像もしないで勝手に怒りをぶつけるという展開に納得がないのですよ。

 

いやね、お互い譲れない想い/正義がある、それは当たり前…、付喪神に対する見解の違いにお互い(内心)怒る、そこまでは良いと考えるのですよ。
しかし一方的に怒りを露わにしぶつけるというのは違うと思うのですよね。相手の事情を想像できる(そういう人格が形成されている)なら勝手に相手側が悪と決めつけて決めつけて怒りをぶつけたりしないでしょ…、怒りに対し理解を示すそれでいいじゃんと思う訳なのです。

 


そして上述した問題点はこの作品の設定、世界観の納得のなさにもつながる話になるのですが…、
主人公の家系は付喪神を封印する役割を担っているんですよね。そして主人公の家系以外にも付喪神を封印する組織が居るという設定、世界観。
という事は顕現した付喪神は大方は人に対し害をもたらす存在だという事が想像されますよね。だからこそ付喪神に対抗する組織が出来たという事ですよね。
もし顕現した付喪神のほとんどは人間と仲良く暮らしている/共生している・ヒロインと同じ様に問題なく一緒に暮らしていけてる、というのならば対付喪神組織なんて出来ないですよね?
(例えば顕現した付喪神の内の8割が無害、2割が有害というのならば~付喪神による被害が極々少数というのならば~対付喪神組織が(派閥があるほど複数)必要なはずもないのでおそらく現状は2割無害、8割有害て感じなのでしょうね)

 

とすると、付喪神と一緒に暮らして家族しているヒロインの方が特殊・例外的であり主人公の「危うい状態、付喪神はバケモノ」という言葉は至極マトモであり一方的に非難される様なものでは絶対にないのですよね…。

 

(アニメではなく現実の事件の話で、長年飼っていた熊(小熊の頃から飼い慣らしていた)に襲われるという事件がありましたが、言葉が通じない/意思疎通が出来ない動物(「人間」とは違う生き物)を分かった気でいる事はやはり危うい事なのですよね。
この作品の付喪神は言葉も通じ意思疎通は可能な様ですがやはり人間とは違う生き物?であり付喪神の本能みたいなもの・付喪神が第一義としている(全付喪神に共通している意思・本能みたいな)ものを理解できない以上はいくら人の言葉を話そうと危うい存在である事に変わりないと考えるのですよね)

 

 

そして第1話では付喪神は封印されるべき存在として描かれています…その描き方からこちら(視聴者)側はそう認識する訳です。それなのにその認識をいきなり覆す様な共生できる付喪神、特例入りの存在という見せ方…、
ホント構成が下手というか設定、世界観がしっかり定まっていないというか…、、、だから納得がないと感じる訳です。

 


またヒロインのキャラの描き方についても問題があると考えています。
ヒロインは基本的に自分の家族の付喪神以外についてはどうなっても良い、消され様が(壊され様が)封印され様がどうでも良い、関与しないという考えなのですよね。
付喪神全般が心ある者達で大切にすべき、全付喪神が愛おしいとか考えてる訳(全ての付喪神に対して優しいとか)では訳ではないのよね…それはそれでどうなの?と感じる。。。

 

 

さらにヒロインの家族の付喪神についても。
ヒロインの家族の付喪神達はヒロインを大切に思っているみたいですが、ヒロインの事が長月家の中でも特別大事なの?長月家当主だから大事なの?先代当主(や代々仕えてきた長月家当主)と比べてもヒロインの方が大事なの?それとも長月家の中でも「稀人」という特別な存在だから大事なの?
その辺りの設定、見せ方もなってないよねぇ…。

 


ホント色々と疑問というか納得がない…設定、世界観、キャラをしっかり作り込んで納得ある作品造りをして欲しいと感じる。

 

 

で、内容/ストーリー構成についてというか冒頭で述べた「大して盛り上がらず終わった」と感じた事について語っておくと、話がほとんど進んでいないと感じるのですよね…キャラ紹介だけで1クール使ったとしか感じられない構成になってるから盛り上がりが感じられないのです(そのキャラ紹介も上手くない、見せ方に問題があるのですが)。

 

 

物語の大半は主人公がヒロインの家族の付喪神たちと仲良くなるみたいなエピソードになるのですが先述した様に、人とは違う「付喪神」の生態というか本能・本心みたいなものが分からんから、今は多少は主人公と仲良くなって信頼している様に見えるのですが、それが何かの拍子に急に主人公を後ろから刺すみたいな展開になるかもしれないんですよね…人間とは判断基準/価値観/考え方・思考が違う「付喪神」という存在だから…ね。


だから表面上は仲良くなった様に見えても実際のところは分らん…生きてきた時間の長さも違う人間とは異なる種であるから主人公やヒロインに対しても一瞬で認識がゴミに変わる事だってあり得ると考えられる訳なんですよね。
(これが「人間」だったら絆/信頼を深めるエピソードが描けてあればあぁ仲良くなったんだな、信頼が生まれたんだなぁと受け入れられるのですが、価値観が異なる(と思われる…描かれてないので全く分からんですが)「付喪神」で同じエピソードを描かれたとしても同じ感情は素直には受け入れられないですよね)

人間同士ならまだしも人間と付喪神という考え方/価値判断が異なる者同士の主人公と付喪神たちの話をいくら重ねられてもその関係が進展してるようには全く思えないのでよね。
それを描く前にまず「付喪神」の設定をしっかり説明して示さないと…。

 


あと、主人公は結構序盤から付喪神に対する認識が変えてくるんだけど…いやいや変えなくて良いでしょ、というか簡単に変わっちゃダメでしょと感じるのよね。
あまりにもあっさり変わり過ぎちゃってちょっと…。

おそらく作者は主人公の付喪神に対する考えを「付喪神」も「人間」と同じ様に良い付喪神も居れば悪い付喪神も居る(良い人間も居れば悪い人間も居る)みたいな陳腐で安易な考えに落とそうとしてんだろうなと感じる…、何年も抱いていた憎悪がそんなんで納得できるのか?

 


なんか少年漫画で良く見る様な構図…悪(今作で言えば「付喪神」)とそれに対抗する組織との戦いという構図を作っただけであまり深く(設定や構成を)考えてない作者なんだろうなと感じる。
観ていて納得ができる様な設定、世界観、構成がをしっかりと描けて欲しいねぇ。

 


多くの漫画、アニメが溢れる中でそこら中に転がっていそうな物語設定であり特筆すべき点もなく
作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。

 

 

以上