アニメ「AIの遺電子」 ~感想

録り貯めしていたアニメ「AIの遺電子」を一気観しました。
以下、多少のネタバレを含む感想となります。

 


物語の導入である第1話は面白いと感じました。
同じ外見(容姿/肉体/器)を持っていて且つ中身(記憶や性格)も同じものを持つのならそれは同じ個体なのかという、データとして同じものを持つ事が可能なロボット、アンドロイドのコピーしたAI人格とオリジナル(AI)の違いは?アイデンティティとは?個とは?を問う面白い導入でした。

 

しかし、その後の話(第2話以降)で展開されるのが人間と同じ様な悩みを持つAI・ヒューマノイドのお話であり、解決へのアプローチ(導入アプローチも含む)がAI/ロボット的・機械的というだけでなんかAIとしての悩み/AI故の悩みというよりかは、人間でも同じ悩み・事柄が起き得るというお話…、近未来SF世界観で(生活する人間)の人間の悩みとして捉えられるお話ばかりなのですよね。

 

 

それもこれも作中に登場する「ヒューマノイド」という存在が人間と変わらない様な思考、行動を取るからなのですよね。
ヒューマノイドって機械の体にAIを搭載いるのですが、機械の体と言っても人間と変わらない様なバイオ系のボディという物で、また頭脳となるAIも現代でいうAIとは異なりまるっきり人間の脳を模して造られたという人間と同じ思考(喜怒哀楽を有しているし人間と同じように悩んだりする、機械的な思考とは程遠い思考)をする造り物の脳(AI)を搭載しているのですよね。


なので、作中で描かれる悩みって実は「ヒューマノイド…進化したAI」の独特の悩みというより近未来で起こりうる「人間」の悩みと言えるのですよね。
なんというか近未来哲学みたいなお話になっていて話によっては結末というか結論がきっちり描かれないで考えさせるようなお話もある感じ。

 

 


う~ん、これはこれで面白くない事もないのだけど想像していたものと違う感じでお話が展開されて行きなんか微妙だったのですよね。

それにこの「ヒューマノイド」の描き方も微妙。何故こんな人間と変わらない思考をするんだ?
自分たち(ヒューマノイド)は人間とは違うと分かっている/理解しているはずなのに、どうして人間同じ様に恋したり悩んだりを思考して、それでいて人間とヒューマノイドと明らかに区別されているのにヒューマノイド達はどういう心理状態で存在しているのか・存在意義の認識・自分自身をどう定義付けているのかその辺の(人間に対するヒューマノイドの立ち位置的な)描写がないから~人間とヒューマノイドに明らかな区別があるのに対照的に描かれている訳でもない(別にヒューマノイドだからと人間から差別されている訳ではない)から~タイトルにもなっている「AI」の意味が弱い…、人間とヒューマノイドの関係を描く、みたいな物語になり得てないのよね(俺は人間とヒューマノイド(人工知能/AI/人工的な脳)の関係をテーマにした作品だと想像していた)。

 


だからこそ(人間とヒューマノイドの対照性が描かれずほとんど同じ様な存在として描かれているから)前段で語った様な近未来SF世界観で生活する「人間」の悩みとして捉えられるお話、と感じられる訳なのですよね。

 

 

ヒューマノイドという存在を登場させておきながら人間と変わらないように描いているから(対照性を描いていないから)テーマが見えなくなってる、作品の方向性が見えなくなってる、作者が何を言いたいのか分からないと感じてしまうのですよ。
まぁ俺には作者のヴィジョン(どこへ向かって描いているのか)が見えてないのでこの描き方が正しいのか間違っているのかは何とも言えないのですがね…。

 

 

一つ言えるのは、今作の終わり方/1クール作品としての終わり方は間違っている、というかダメな終わり方をしてるという事。


物語序盤で主人公の母親の件が作品の軸としてあるのは示されていたのですが、結局なにも進展しないままで終わりましたからね(居場所が分かってそれだけ…)。
いやいやいや、話が進展しないのならばもういっその事、母親の件を語らなければ良いのに…(語るとしても終盤で語る構成にして、序盤~中盤はヒューマノイドの設定説明に全振りする構成)。
最序盤で母親の話を振っていただけに(話の軸として終盤回収されるものと期待していただけに)中途半端に終わる構成が問題となってしまってる訳ですよ…。

 


あと、主人公はなんか特殊・スペシャルの様だけど何だか分からんね。あくまで優秀な医者・技師みたいな感じしかないけど納得できる何かがあるのだろうかね?

 

 


他に気になる点、疑問点として、
作中でのヒューマノイドのAIと産業ロボットとのAIの違いがよう分からん。産業ロボットのAIも人間と同じ様に感情豊かな感じで描かれてるのよね(頭の方は高度な計算が瞬時に出来るみたいでヒューマノイドとは違う様ですが)。
やはりヒューマノイドの設定を徹底してどこかでやっておく構成にしておくべき・必要があったと感じるのですよね…。

 

 

 

最初は少し期待したのですが、早い段階で俺の中で失速して行った感じの残念な作品で(しっかり設定を考えてあるのならばどこか早い段階で詳細を説明する構成にすべきだったと感じる)
作品の評価としては、可もなく不可もなくとなります。

 

 

以上